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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

ちょっと難しい植物-317.ヤマミゾイチゴツナギ-

春はイネ科の植物も多く開花する時期です。撮影が難しいのと面倒さも加わり、なかなか紹介できませんでしたが、一応見ることができる写真が撮影できたので紹介します。ヤマミゾイチゴツナギです。

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岐阜県関市にて(4月29日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

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個々の花序は細くて目立ちませんが、群生すると結構存在感があります。

ヤマミゾイチゴツナギはイネ科イチゴツナギ属の越年草(えつねんそう:秋に発芽して冬越し、翌春に開花・結実して枯死する)で、北海道~九州に分布します。やや湿った明るい樹林地や林縁に生育します。

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ヤマミゾイチゴツナギの小穂。これだけ見るとスズメノカタビラと大差ありません。

ヤマミゾイチゴツナギは春先に水田でよく見かけるスズメノカタビラと同じ属になります。ひょろっとして花序も垂れており、外見の雰囲気はスズメノカタビラに全く似ていませんが、小穂の形を見るとよく似ており、この部分から同じ属ということがわかります。イネ科は外見の雰囲気よりも、小穂の形のほうが仲間を見分けるのに重要ということですね。イチゴツナギ属は国内に20種以上があり、人里近くにも複数の種類が生育しています。慣れれば小穂の形からイチゴツナギ属ということまでは簡単にわかるようになるので、比較的とっつきやすいイネ科植物だと思います。ただ、属内に多数の種類があるので、属の先は図鑑等で調べる必要が出てくると思います。

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近所の河川沿いの若いエノキ疎林に群生。陽光から林内の明るい感じがわかります。

ヤマミゾイチゴツナギの名前の由来は、ミゾイチゴツナギという植物(これもイチゴツナギ属の植物)に似ていて、山に生育しているということだと思います。ただ、ヤマミゾイチゴツナギはそれほど奥山や標高の高い山に分布するわけではなく、里山のような比較的低山で見ることが多いと思います。ミゾイチゴツナギと似たような環境に生育することもよくあるので、わりと身近な植物だと思います。

ヤマミゾイチゴツナギの特徴は次の4点です。イネ科の花序花のつくりについては別記事を参照して下さい。

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①葉:葉舌(ようぜつ:こちら参照)は明瞭で、先端は尖りません。茎の葉は太いもので幅4-5mmになります。

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②花序:花序(かじょ:花の集合)円錐花序ですが、花序の枝が広く開出することはなく軸に接するような感じに伸びます。そして花序の先端は稲穂のようにおじぎをします。

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③小穂:小穂(しょうすい)は2-3小花からなり、芒(のぎ:小花の先にある針状の毛)はありません。
④小花:小花(しょうか)外えいは側脈が不明瞭で、毛も殆どありません。内えいの竜骨(りゅうこつ:こちら参照)には長い毛があります。長い毛はルーペで見ることができ、内えいの竜骨部分に長い毛がある種類は一年草か越年草です。

類似種は多いですが一番似ているのはミゾイチゴツナギです。ミゾイチゴツナギは大きさも生育環境も似ています。ミゾイチゴツナギは花序の枝が散開し、小花の外えいの脈が明瞭で、脈部分に毛が多い点で異なります。