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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

イネ科の花序の形

イネ科は種類も豊富ですが、属の数も多い分類群です。改訂新版日本の野生植物ではカヤツリグサ科の場合24属で400種以上なのに対し、イネ科の場合138属で400種以上となっており、同じ規模の種数でも属の数が大きく異なっています。

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フォーリーガヤ。よく見る感じの雰囲気ですが日本では1属1種の珍しい植物。北海道釧路市にて(6月14日)。

属を決めるのが楽で、その後面倒な検索表に進むのが好きか、属を決めるのに悩んで、その後は楽な検索表に進むのが好きかといった違いですね。多分慣れれば、どちらも大差はないと思いますが、私は属が少ない方がとっつきやすかったですね(笑)。

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セイバンモロコシ。外来種が多いのもイネ科植物のやっかいな点です。神奈川県茅ケ崎市にて(7月13日)。

イネ科の属については花序の形である程度候補を絞り込み、その後小穂や小花の形で属を決めていく感じになります(私のイメージです)。ただ、花序の形が若い時と結実してる時で形状が違っていたり、花序の形をどうとらえるかが図鑑によって少し違っていたりするので、最初にある花序のグループを探してみて似ているのが無ければ、次に似た花序のグループで探してみる、といったトライ&エラーを繰り返していく感じになります。習うより慣れろといった感じかもしれませんね。それでは早速花序をグルーピングしてみましょう。

①花序は1本の総からなる

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このグループは花序軸が明瞭に1本で、その花序軸に穂状(小穂に柄が無い)か総状(小穂に柄がある)に小穂がつきます。このようなつき方の花序の花序全体を総(そう)と呼びます。小穂がまばらにつく仲間はわかりやすいですが、小穂を密生するタイプは⑤のグループとちょっとわかりづらいかもしれません。

②花序は複数の総からなり、総は茎の先端付近に集まる

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このグループは①で説明した総が茎の先端付近に数本集まるグループです。たいていは総の数は10本以下の仲間が多いです。「茎の先端付近」というのが微妙な表現で、どのくらいまでが茎の先端なのか…というのが悩みどころかもしれません。このグループに無ければ、多分③のグループに入ると思います。

③花序は複数の総からなり、総は茎の上部に段々につく

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このグループは①で説明した総が茎の上部に段々に多数集まるグループです。総のつく軸は長く、総の数は数十本になるものもあれば、数本で収まってしまうものもあります。このグループでは「軸は長く」が微妙な表現で、総が少ない場合は②のグループと悩むかもしれません。逆に総が多い場合、花序の下部で総の軸が分枝することもあり、そうなると④の円錐花序と間違えてしまうこともあります。

④花序軸は枝分かれして円錐状になり、枝分かれは明瞭

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このグループは中軸に直接小穂は着かず、中軸から複数回分枝した枝先に小穂をつけるグループです。さらに分枝の枝も長いことが多いので、分枝しているというのが明瞭にわかります。ただ分枝した枝が横に広がればわかりやすいですが、分枝した枝が中軸に沿って伸びるものもあり、その場合は小穂が少なめのものは①と勘違いしやすくなり、枝が短くて小穂が多いものは⑤と迷う時もあります。

⑤花序は小穂が密生して円柱状(小穂が密生してどのようについているかわからない)

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このグループはよく見ると中軸から短い枝が多数出ているので、④の円錐花序に近いものです。小穂が密生しすぎてどのようについているかわからない場合はこのグループになることが多いです。

⑥ ①~⑤のパターンにあてはまらない

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このグループは花序だけでなく小穂の形にも特徴があり、花のつくりがどうなっているのかわかりづらいものが多いです。逆に言えば変わった花序と小穂を持っているので、図鑑の絵合わせで簡単にわかるものです。それほど種類は多くないので、図鑑やネットで簡単にわかると思います。

今回も「増補イネ科植物図譜」(長田武正.平凡社)、「イネ科ハンドブック」(木場英久・茨木靖・勝山輝夫、文一総合出版を参考にしています。