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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

春といえば黄色の花-316.ツルキンバイ-

春の黄色の花は平野部や里山だけでなく山地でも見られます。ツルキンバイは一見すると平野部に多いヘビイチゴのようにも見えますが、山地だけに分布する身近ではない植物だと思います(笑)。

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福島県いわき市にて(5月7日)。全て産地同じで記載ないものは撮影日も同じです。

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この仲間は花だけアップで撮影しても皆殆ど同じ形状です。

これらの写真は標高650~700mの山地で撮影したもので、高木のコナラが少し葉を開き始めた頃に花が咲いていました。わりと春早くに咲くんですね~。たまに調査で見る時は葉だけのことが多かったので、きれいな花に出会えて結構うれしかったです。ちなみに、イチゴみたいな赤い実はならないので、花の時期以外はあまり面白みのない植物かもしれません(笑)。

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この仲間は種を識別するには葉の形や裏面の色彩が重要となります。

ツルキンバイはバラ科キジムシロ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州・四国・九州の太平洋側の地域に分布します。この仲間は草地や林縁に多い印象を受けますが、ツルキンバイは落葉広葉樹林内に生育することが多いようです。私も今まで見た場所はいずれも落葉広葉樹林内でした。

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つるで増えるので群生する時もありますが、ここでは控えめでした(4月27日)。

名前のとおり地表に走出枝(そうしゅつし:地面を横に這う茎で、先端のみに子苗ができる)を出すのがツルキンバイの特徴の一つですが、キジムシロ属は走出枝を出す種類が結構あります。つる(走出枝)を出しているからツルキンバイということではありませんので、その点は注意して下さいね。

ツルキンバイの特徴は次の3点です。

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①茎:地表を這う走出枝(そうしゅつし:地面を横に這う茎で、先端のみに子苗ができる)を伸ばします。花の時期でも走出枝は目立ちます。

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②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)し、3出複葉で、小葉は菱型に近い楕円形~卵形で先はとがります。鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)は単純で、葉や葉柄には伏した毛が多いですが、葉の裏が白くなることはありません。

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③花:地際から10-20cm前後の茎を伸ばし、花を2-3個つけます。花は黄色で直径1-1.5cm程度です。花数が少ない点でヘビイチゴにも似ていますが、副萼片が披針形で小さい点が異なります。

よく見る類似種にはヘビイチゴヤブヘビイチミツバツチグリがあげられます。いずれも平野部や里山に多い点で異なりますが、ミツバツチグリは山地にも出ることがあるので、一番似ていると思います。ミツバツチグリは花茎あたりの花数が多いことと、小葉が丸味を帯び菱状にならない点が異なります。テリハキンバイという植物もありますが(私はまだ見たことが無い)、これも葉が菱状にならない点が異なるようです。