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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

イネ科の用語解説(その2)

イネ科の同定で一番重要なのが花です。

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ススキは日本人に一番愛されているイネ科の野草でしょう。長野県大鹿村(9月2日)。

花がついていない葉っぱだけの標本を持ってこられたら、いくら詳しい人でも種を同定するのは厳しいと思います。ですから極論を言えば、花がついていないイネ科の植物は無視してもよいということです(笑)。逆に花がついていればだいたいの種類は確定できるので(当然図鑑がないとダメですが)、花に関する用語は必要不可欠と言えます。

●肉眼で見えるところの用語

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花序を手に取って肉眼で確認できるのが小穂(しょうすい)で、小穂が多数集まって花序となります。コバンソウのように小数の小穂で一つの花序になるものもあれば、数えきれないほどの小穂からなる花序もあり、花序の形は様々です。この花序の作りが種を同定する時の第一関門になり、属の区分は花序の作りの違いで決まることもあります。

●肉眼~ルーペで見えるところの用語

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小穂(しょうすい)はルーペで見るような小さいものもあれば、コバンソウのように巨大なものもあります。小穂は1個~複数個の小花(花のこと。イネ科では個々の花のことを小花と呼ぶ。)から成り立っているので、その個数をチェックしておく必要があります。
花の数を数えるのなんて簡単と思った方いませんか?実は花の数は奥が深く、実際は2個の花から成り立っているけど1個の花は退化して見えないとか、一見すると1個の花だけど顕微鏡で見たら2個だったとか、複数個花がついていても実が成るのは1個だけとか、どうカウントしたらよいのか迷う時もあるみたいです。まあ、最初のうちはそこまで気にしなくてもよいとは思いますが…頭の片隅にでも置いといてもらえればよいと思います。

●ルーペ~顕微鏡で見えるところの用語

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①第一包頴(だいいちほうえい):小穂の柄と最初にくっついているやや硬めの膜状のもの。
②第二包頴(だいにほうえい):第一包頴のすぐ上につくやや硬めの膜状のもの。通常第一包頴と第二包頴が1セットとなり、小穂には1セットのみがつきます。ただし、たまにどちらかかが退化したりしていることがあります。通常は第二包頴の上に小花が1~複数個つきます。
③護頴(ごえい):小花の最も外側の膜状のもの。第一・二包頴より柔らかめのことが多い。
④内頴(ないえい):護頴の内側にある膜状のもの。護頴より柔らかめのものが多く、護頴よりも小さいことが多い。外側から容易に見えることもあれば、ピンセットで取り出さないと見えない時もある。
⑤雄しべ・雌しべ:これは通常の花の器官ですね。護頴と内頴の間にあります。
⑥芒(のぎ):小穂の外側に飛び出している硬めの毛の総称。全ての種類にあるわけではありません。芒は写真のように護頴につくこともあれば、第一包頴や第二包頴に着く時もあります。
⑦毛:芒とは異なる柔らかい毛。全ての種類にあるわけではありません。ススキやチガヤのように目立つものもあれば、ノガリヤスの仲間のように短い毛の場合もあります。

今回は「増補イネ科植物図譜」(長田武正.平凡社「イネ科ハンドブック」(木場英久・茨木靖・勝山輝夫、文一総合出版を参考にしています。「イネ科ハンドブック」は値段も手頃なので、入門書として大変おすすめです。