銀色に輝く穂-319.チガヤ-
イネ科の植物の花(穂)というと観賞価値の無さそうなものが多いですが、きれいなものも結構あります。最も有名なのは中秋の名月に飾るススキだと思いますが、チガヤの穂も負けずに美しいので覚えておきたい植物です。
三重県多気町にて(5月19日)。以下、産地が同じものは撮影日同じです。
今年はコロナの影響で河川敷を走ったり、歩いたりしている人が多いと思いますが、春から初夏にかけて銀色に輝く穂を道端や河川敷で見ませんでしたか?初夏の今頃だと種が風に飛ばされてフワフワ漂っていたりもしますね(ヤナギの種もこの時期飛んでいるので、河川敷でどちらの種子か区別するのは難しいですね)。
岐阜県海津市にて(5月24日)。木曽川の河川敷堤防です。これなら気付きますね。
チガヤは草丈が低いので個々の穂はススキほど目立ちませんが、地下茎で繁殖することによって群生することが多いので、きっと目にしていると思います。
もう少し青空だったらチガヤの穂がもっと映えたのにな~(岐阜県海津市)。
チガヤの穂の高さまでしゃがんで見てみると、かなりきれいだと思うのですが、どうですか?チガヤの穂が風になびいているのを見ると、とても爽やかな気分になります。
こんな感じになると種が風でフワフワと飛んでいく(岐阜県海津市)。
チガヤはイネ科チガヤ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、日本全国の日当たりのよい草地に生育します。ただし日本全国全く同じという訳ではなく、芽を出す時期、穂を出す時期、個体サイズの違いによって、寒冷地型、亜熱帯型、両者の中間的な普通型とあるようです(チガヤの生活史特性の分化.冨永達.「雑草の自然史-たくましさの生態学-」参照)。
遷移の進んだチガヤ群落。オギやセイタカアワダチソウが侵入してきている。この状態になると綺麗さは失われる。美しい草地には草刈は必須(佐賀県神埼市.5月30日)。
チガヤは種子を風で広範囲に飛ばすことによる種子繁殖と地下茎による栄養繁殖の両方の繁殖戦略を持つタフな植物ですが、草丈が低いので、オギやススキのような草丈の高い草本や木本類に覆われると、やがて衰退してしまいます。そのため、定期的に草刈りが行われる河川敷の堤防は、チガヤにとって最適な環境と言えます。
チガヤの特徴は次の3点です。イネ科の花序の特徴はこちら参照。
①草丈:膝丈から腰丈ぐらい。
②葉:葉はイネのように地際から出て株となります。表面の色は光沢のない黄緑色で中央にうっすらと白線が出ます。形状は線形で基部側の幅が狭くなり、葉の基部や葉鞘に少し毛が出ます。
③花:花茎の先に銀色の1個の花序をつけます。図鑑では円錐花序と書いてありますが、毛が多すぎるため、1本の総からなる花序のように見えます。花の形状も毛が多すぎてよくわからないのが特徴です(笑)。銀白色の長毛を密生する花序があれば、見間違う植物はありません。
似た植物はありませんが、花茎の節の部分に長毛があるものをチガヤ(フシゲチガヤ)、節の部分が無毛のものをケナシチガヤと区別する場合もあります。両者は変種の関係にあります。ケナシチガヤは寒冷地型のチガヤとされ、海辺に近い地域に多いような気がします。また、湿地に生育するとも言われていますが、その点については私にはよくわかりません。