身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

2019年の出会いベスト5(第1位)-301.ホザキマスクサ-

今年一番のうれしかった出来事は、なんと言っても岐阜県植物誌の完成です。岐阜県植物誌にはスゲ属の植物が105種(亜種や変種はカウントしない)掲載されています。この数は県別に見れば多い方で、これは岐阜県の位置や、県内に標高約0~3000mまでの様々な環境があることが関係しているといえます。岐阜県植物誌の発刊で県内の植物は調査しつくされた感もありますが、実際はそうでもありません。岐阜県は広いですし、山も深く、行けないところもたくさんありますからね…。県内新発見の種類を見つけるには相当山奥に行かないといけないのかと思いきや、意外とすぐ近くで見つけることができました。それがこのホザキマスクサです。

 

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岐阜県海津市にて(5月4日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

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卵型の小さな小穂が多数つくのが特徴。ただ、この仲間は見慣れないと現場判断が難しい。

ホザキマスクサはうちの近所を流れる長良川下流、愛知県との県境付近の河畔で見つけました。この発見は偶然ではなく、情報を元に探しに行った結果です。愛知県のレッドデータブックにはホザキマスクサが掲載されていて、その記載文に岐阜県側にもたくさん生育していると書かれていたのを参考に、探しに行って見つけたという感じです。観察した雰囲気では、広範囲の疎林内や林縁に点々と生育しているといった印象でした。生育環境はすごく良い環境というよりも、どこにでもあるような環境で、正直拍子抜けした感じでした。「こんなところわざわざ入って探さないかな~」というような場所だったので、これまで標本が採られてこなかったのかもしれません。逆にそのようなどうでもよい環境なので、築堤等の河川工事で人知れず無くなってしまう可能性もあります。どれだけ効果があるかはわかりませんが、来年は岐阜県植物研究会誌に投稿して、皆さんに認識してもらいたいと思います。

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河川敷の藪の中で人知れずひっそりと生育していました。灯台元暗しですね。


ホザキマスクサはカヤツリグサ科スゲ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、ヤブスゲ節というグループに属しています。愛知県以西の本州に分布し、河川敷の草地や林縁に生育します。

ホザキマスクサの特徴は次の4点です。

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①全体容姿:株状になり、草丈は膝丈以下。1株かどうかわかりませんが、結構大きな株になります。

②葉:葉は無毛で幅は2-4mm、長さは30cm以上になります。

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③小穂のつき方:小穂は卵型、1cm未満で8個以上がやや間隔を空けてつき、一番上の小穂は雌雄性(先端が雌で基部が雄)がわかりやすいです。その他の小穂も雌雄性ですが、雄の部分が非常に短いので、一見すると雌だけのように見えます。苞(ほう:小穂の下につく葉)は長く下部2-3個の小穂のは花序よりも著しく長くなります。

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果苞果苞は卵形で翼(よく:ひれのような一部分)があります。柱頭は2裂します。

ヤブスゲ節のグループに属するスゲはわりと皆似ていますが、特に似ているのはタカネマスクサです。タカネマスクサは小穂の数が7個以下と少ない点が大きな違いです。同じ節のヤブスゲも似ていますが、ヤブスゲは小穂が細長く、果胞も細長い点で異なります。節は異なりますがよく見かけるマスクサも雰囲気が似ています。マスクサは柱頭が3裂する点が異なります。