2018年の出会いベスト5-263.コカイスゲ-
1年は早いもので、2018年ももうすぐ終わりですね。訪問してくださった皆様、どうもありがとうございました。それでは、今年一番の思い出深かった出会いは~、コカイスゲです
この植物が最初に紹介されたのは「日本のスゲ 増補改定」(勝山輝男 2015)という図鑑です。約3年前に出版された図鑑なので、コカイスゲはごく最近になって認識された種であることがわかりますね。
コカイスゲはカヤツリグサ科スゲ属ヒメシラスゲ節の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、関東地方の河川敷の草地や明るい林内に分布します。ほぼ日本全国に分布するシラスゲの変種とされていて、正確に言えば近年発見された新種ではなく、新変種ということになります。実はコカイスゲとの出会いは初めてではありません。3年ほど前に、「スゲの会」で小貝川周辺の観察会に出かけた際に、その帰りがけに知人からコカイスゲの生育場所(小貝川)に案内していただきました。たまたま堤防除草の影響で殆どが刈られてしまっていましたが、なんとか数株確認することができ、「これが新変種か~(当時は図鑑が出版されたばかり)」と感動したものでした。
私はコカイスゲという名前から、コカイスゲは小貝川にしか生育しないものと思っていましたが、今回はお隣の鬼怒川河畔でも出会うことができました。コカイスゲは地下茎で増えるため、かなり群生している場所もあり、とても驚かされました。小貝川も鬼怒川も利根川の支流の一つなので、利根川流域の低地周辺には点在して生育しているのかもしれません。
コカイスゲの特徴は次の4点です。語句の解説はコチラ。
①生え方:地下茎で増えるため群生します。
②大きさ:50-70cm程度で、膝丈ぐらいの大きさです。
③葉:葉は茎とともに白っぽくなります。真っ白ではなく青白い感じです。シラスゲより葉の幅が狭く、シラスゲの葉の幅が5-10mmなのに対し、コカイスゲの葉の幅は3-5mm程度です。
④雌小穂:コカイスゲの雌小穂はシラスゲよりも細く、短い柄があり少し垂れ下がります。コカイスゲは果苞の数が少なく、軸に対しても斜めにつきます。一方、シラスゲは果苞を密生してつけ、しかも軸に対してほぼ直角につきます。このように果苞のつき方が異なるため、雌小穂が細く見えます。柱頭は3分岐し、果苞の先は細くなり、形状的にはシラスゲと大差はありません。
似たような種としてはシラスゲがありますが、上述したように葉の幅や雌小穂の形で簡単に見分けられる雰囲気です。ただ、中間型があるのかどうかまではわかりません(変種関係にある2種の場合、中間的なものがあって、どちらか迷うような植物もよくあります)。遠くから見ると、花序の雰囲気がヒメゴウソ、オタルスゲ、カワラスゲなんかにも少し似ていますが、これらは柱頭が2分岐の点で異なり、雌小穂を手に取れば間違うことはないです。