砂礫地の植物-337.コマツヨイグサ-
関東地方で12月にきれいにい開花している野生植物は無いだろうと思っていたのですが、この時期になってもたくさん花をつけている植物がありました。コマツヨイグサです。
埼玉県熊谷市荒川河川敷にて(12月2日)。記載ないものは撮影日・撮影場所同じ。
曇り空のため、きれいに開いている花は少なかった。
近年は暖冬傾向にありますが、冬枯れの河川敷でここまで青々としてたくさんの花をつけているのは意外でした。コマツヨイグサは地表を匍匐するタイプから、茎を斜上させるようなタイプまでありますが、ここで見た個体は全て地表を覆うように生育する匍匐タイプのものでした。
緑色のパッチがコマツヨイグサ。寒々しい河川敷で元気に花を咲かせています。ここまでぺったりと匍匐しているような個体はあまり見たことがありませんでした。
ひょっとしたら、この匍匐という生育の仕方が青々としていられる秘密なのかもしれません。越年草の仲間では冬場にロゼットと呼ばれる地表に伏した葉をつけて越冬する植物があります。コマツヨイグサの葉は葉のつき方からロゼットではありませんが、ロゼットと同じような位置に葉を広げており、ロゼットと同様の寒さ対策になっているのかもしれません。関東の空っ風を避けるための対策と言えますね。
中央のシャーペンは15㎝。パッチの直径は1m以上ある!
根元は木みたい!これは1年でここまで成長したのか、それとも数年たっているのか?
ただ、このまま冬を越せるかどうかは観察してみないと何とも言えません。コマツヨイグサは一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)から短命な多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)、または可変性二年草(実をつけるまでに数年かかり、その期間は多年草的に生育し、実をつけた後に枯れてしまう)とも言われています。ここで見た個体は大きなものでは枝葉の占める面積の長径は1m以上に達し、根元は木化して直径が1cm程度になっていました。ここのコマツヨイグサのこれまでの生い立ちとこの冬の運命はちょっと気になるところです。
神奈川県平塚市にて(7月13日)。標準的な容姿だと思います。
コマツヨイグサはアカバナ科マツヨイグサ属の外来種で北米東部原産です。1900年代前半には日本に定着していたようで、今ではほぼ日本全国で見られます。河川敷や海浜の砂礫地に多く、植被のまばらな草地に生育する傾向があります。
コマツヨイグサの特徴は次の4点です。
①茎:茎は基部で分枝し、地表を匍匐するか斜上します。草地に生育するものは茎が立ち上がる傾向にありますが、基部は斜上していることが多く、基部から直立することはありません。
②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)し、長楕円形で長さは2-10cm、低い鋸歯が数対出るのが普通ですが、ほぼ全縁のものや、羽状に中裂する時もあります。葉の形はかなり変異があります。
③花:明瞭な花序(かじょ:花の集合)は作らず、上部の葉の腋に1個づつ花をつけていきます。1本の茎に多数の花をつけますが、茎が伸びながら順々に咲くので、1回に咲く花の数は1-2個と少なめです。花は優しい黄色で、直径は2cm前後、花弁は4枚あります。
④果実:果実は細い円柱形で基部から先端までほぼ同じ太さで、目立った翼(よく:ヒレ状の形状をしたもの)はありません。
マツヨイグサの仲間は花の形状が皆似ていますが、全体的な容姿からコマツヨイグサと見誤る植物はありません。ただ、コマツヨイグサの形の変異が大きく、皆同じ種類なの?と思ってしまうことがあると思います。実際、花の直径が4cm程度になる大きな花をつけるコマツヨイグサはオオバナコマツヨイグサと区別されることもありますが、花の大きさの変化は連続的で、葉の形状の変化の大きさも加味すると、オオバナコマツヨイグサは区別するほどのものでもないという見解もあります。コマツヨイグサは花や葉の形状、茎の立ち上がり方、いろんな個体差がある植物と言えます。