身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

もう少し華やかだったら-321.コナスビ-

個人的にはきれいな花だと思うのですが、コナスビはあまり認知されていないような気がします。名前も可愛らしくて、いいんですけどね。

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岐阜県飛騨市にて(6月23日)。以下、撮影場所が同じものは撮影日一緒です。

コナスビは花のアップだけ見ると美しいのですが、花自体は直径1cm程度と小さく、植物体は地面を這うように生育するので、実際はそれほど目立たない植物です。

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岐阜県高山市にて(6月24日)。これなんか比較的花が多いかな。

花の時期は春から夏にかけてで、大きな個体はそれなりにたくさんの花をつけますが、たくさんの花が一気に咲く感じではなく、1個ずつ順番に咲いていくような雰囲気です。このような花の咲き方も目立たない原因の一つだと思います。もう少し花が大きいか、花つきがよかったら、園芸価値のある植物になっていた思います。まあ、コナスビさん的にはそんなことどうでもよいかもしれませんが(笑)。

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岐阜県郡上市にて(7月2日)。林縁や草地でよく見かけ、明るい所では花つきがよい。

コナスビはサクラソウオカトラノオ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~琉球に分布します。生育環境は幅広く草地、林縁、明るい樹林内といった感じで、比較的よく目にする植物だと思います。生育環境をあまり選ばないせいか、中国から東南アジアにかけての広範囲に分布する植物のようです。

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ナス科の花は紫色が多いので、一見してナス科っぽくない(岐阜県飛騨市)。

「コナスビというのにナス科じゃないんだ~」と思いますよね。察しのよい方は、花がナスの花に似ていないので、ナス科ではないことはわかったかもしれませんね。それではどうしてコナスビなんでしょう?

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花が終わって実の状態。なんとなくナスのヘタっぽい(岐阜県飛騨市)。

多分、花が終わった後の萼の形がナスのへたの形に似ているからじゃないでしょうか。萼の中をのぞいて見たら小さな実ができていました。この実が大きくなればナスっぽいのですが、萼から飛び出すほど大きくはなりません(笑)。

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もう一回りくらい大きく成長しますが、ナスのようにはなりません(笑)。

コナスビの特徴は次の3点です。

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①全体容姿:植物体は基部で多数分枝して、茎は地表を這うようにして伸びます。ただし茎は匍匐枝(ほふくし:地面を横に這うような茎。節から根が出る)ではないので、横に長く伸びることは無く、各茎は20-30cm程度しか伸長しません。

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②葉:葉は基本対生(たいせい:葉が対になって着く)ですが、時々互生(ごせい:葉が交互に着く)します。葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)葉柄(ようへい:葉の柄の部分)をあわせて2-3cmぐらいの大きさです。葉柄は明瞭で葉身は卵型~広卵形で全縁(ぜんえん:葉の縁にギザギザがない)、先端はややとがります。葉の裏面に透明な腺点(せんてん:油の粒のような点)が多数ありますが、時々それが紫色になる時もあるようです。

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③花:花は葉腋に1個つき、黄色で直径1cm程度です。筒状の花は5裂し、星形になります。萼片はナスのへたのように先端がとがります。

よく見る植物で似たものはありませんが、同属の類似種が何種かあり、その多くは九州地方に分布します。同属の類似種としては、ミヤマコナスビ、ヘツカコナスビ、オニコナスビ等がありますが、いずれも茎が地を這って長く伸びます。

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コバンコナスビ。写真ではわからないが茎が長く伸びる(北海道石狩市,7月15日)。

外来種のコバンコナスビがたまに帰化していますが、これも茎が地を這って長く伸びる点が異なります。