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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

生食はまずい!-338.クコ-

「クコの実」をご存じですか?高級なお店の杏仁豆腐の上にのっている赤い実が「クコの実」ですね。「クコの実」は中華食材のイメージが強いですが、クコは日本でもごく普通に生えている植物です。

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埼玉県熊谷市にて(12月2日)。以下、記載無いものは撮影日・撮影場所同じです。

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つやつやとした実はいかにも美味しそうだけど…。唐辛子にも似ている…。

クコは河原の藪でよく見かける植物で、晩秋になるとたくさんの実をつけている個体に出会えます。つやつやした赤い実はいかにも甘くて美味しそうですね。野生動物達にとってもご馳走かもしれません。書籍やネットの情報では人間が食べても大丈夫とのことなので、ちょっと味見をしてみました。

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ナス科の植物なので、トマトやトウガラシに似て種がたくさん入っています。

「ウェ~」苦みとえぐみが口の中に広がります😱ちょっと齧っただけで良かった…と思うくらいの不味さでした。トマトに似た味と表現されることがありますが、私はそうは感じませんでしたね。まあ、味覚は人それぞれですしね。個人的には生食はおすすめしません😅。

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神奈川県茅ケ崎市にて(10月12日)。花は夏から秋までダラダラと咲きます。

クコはナス科クコ属の落葉低木(らくようていぼく:冬に葉を落とす、4m程度以下の木本)で、人の背丈までは大きくならないことが多いです。北海道~琉球までの低地の藪に生育します。薬草として重宝され、実だけでなく、葉や根の皮の部分も使われます。果実はドライフルーツとして出回っているものが一番手に入れやすく、滋養強壮に効果があるそうです。生の実を果実酒として利用するのもよいようです。

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殆どの草が刈れた初冬の河川敷。鮮やかな緑色は全てクコです。夏場は背丈の高い草やつる植物に覆われてあまり目立たないけど、この時期はすごく目立つ。

クコは図鑑には落葉低木と書いてありましたが、葉の出るタイミングがちょっと変わっています。普通、落葉樹であれば春先に芽を出し、夏まではグングン成長し、葉もたくさんつけ、秋になると葉の色が悪くなり(紅葉)、晩秋には葉を落とします。ところがクコは、秋でも成長して生き生きとした葉をたくさんつけます。河原では夏に調査してもクコは目立たないのですが、晩秋に調査をすると「こんなに生育しているんだ!」と思うくらいクコがとても目立ちます。

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近づいて見ると皆みずみずしい葉をつけていました。比較的最近伸びた感じです。

晩秋の葉はみずみずしく、「これで本当に落葉するの?」という感じです。ただ、常緑樹のような硬い葉ではないので、霜に当たれば枯れてしまうような雰囲気ではあります。実は私もクコを1年継続して見たことがないので、成長のしかたが実際のところはわかりません。冬場に本当に落葉するのか気になるところではあります。身近な植物でも知らないことはたくさんあるもんですね。

クコの特徴は次の4点です。

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①枝:枝はやや角張り、色は白っぽい褐色です。葉の付け根に1㎝ぐらいのトゲが出ることが多く(出ない時もある)、トゲは若い枝で顕著で、古い枝では殆ど無いことが多いです。

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②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)ですが、1箇所から大きな葉と小さな葉が3枚程度まとめて出ることが多い。葉の長さは1.5-6cmぐらいです。形状は長楕円形~楕円形、または狭倒卵形~倒卵形(とうらんけい:葉の上方が幅広くなり、卵形を反対にしたような形)で、全縁(ぜんえん:葉の縁にギザギザがない)、殆ど無毛です。葉の形状は変化が大きいので、全体的な雰囲気で覚えるのがよいです。

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③花:花は葉腋に1-3個くらいつき、淡い紫色で、花冠(かかん:つつじのような形の花の花びら)は5裂し、星形になります。

④果実:果実は晩秋に赤く熟し、楕円形で長さは1-1.5㎝です。小さなトウガラシみたいな雰囲気です。

ナス科の植物ではヒヨドリジョウゴやマルバノホロシ、ハダカホオズキ等が赤色の実をつけますが、いずれも茎が柔らかい草本です。ナス科の木本は国内には殆ど無いので、クコに似た植物はあまり無いと思います。