身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

超たくましい植物-279.クサイ-

「たくましい」の定義があいまいですが、ここでは人間にいじめられても力強く生育する植物という意味で使用しています。そのようにとらえれば、耕作地や路傍の雑草は大半がたくましい植物となりますが、クサイはその中でもかなりタフな植物だと思います。

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佐賀県神埼市にて(5月30日)。下の写真も撮影場所・撮影日同じです。

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結実期の状態です。日射が強く、たまに乾燥するのか葉先が赤味を帯びています。

クサイはイグサ科イグサ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、ほぼ日本全国に分布し、世界的に見てもアフリカ以外の広範囲に分布するようです。人が頻繁に出入りするような路傍やグラウンドのような植物のまばらな草丈の低い明るい草地に生育します。特に人に踏まれまくる未舗装の明るい散策路なんかは大好き?な環境です。

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グラウンド脇に成立したクサイ群落。佐賀県神埼市にて(5月30日)。

ワレモコウやキキョウが咲くような管理されたきれいな草地に生えることは少なく、ススキやオギが生える人の背丈以上にもなる草地にはまず生育しません。踏まれるのが好きなんてマゾな植物だな~なんて思ったりもしますが、実はそれほど苦痛ばかりを受けているのではないようです。

メリットその1。太陽の恵みをいっぱい受けられる。人の歩く道ですから、当然他の草は少なく明るい環境です。踏まれるダメージは受けますが、光は独り占めできます。
メリットその2。種子を生育に適した環境に運んでもらえる。クサイの種子のまわりには粘着物質がついていて、それで人や動物にくっつきます。人にくっつけば、相当遠くまで運んでもらえるし、人の歩く場所は私のような人でなければ草の少ない場所ですね。人はクサイにとっては最高の運び屋ということになります。
また、クサイは踏みつけに対しても対応策を備えているようです。まず植物体が硬くてなかなかちぎれません。ちょっと踏んだ程度では痛くもかゆくもないのでしょう。あと根も強く、大株だと手で抜くことはできません。人が「邪魔だな~」と思っても、そう簡単にどいてくれないようです。

踏まれてばかりのかわいそうな草と思ったら大間違い。実は世界中に進出した相当やり手な植物といっても過言ではないと思います。そんなクサイの特徴は次の4点です。
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生育環境:路傍や人の踏みつけの影響を受けるような草地や湿地に生育します。これは前述したように種子が人間によって運ばれるからですね。
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  茎と葉:茎は膝丈以下で無毛。基部に2-3枚の長い葉(茎よりも短い)をつけ、葉の付け根に葉耳(ようじ)と呼ばれる薄い透明な膜があります。この葉耳が無いと、類似の外来種であるアメリカクサイだそうです(まだ見たことが無い)。
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  花序:花序よりも長い苞(ほう:写真参照)が普通2枚あり、花序は枝分かれして多数の花を1個ずつつける。
  果実:花皮片(かひへん:単子葉植物の仲間の花びらや萼のこと)6枚あり、その中に卵型の果実をつけます。このような果実はイグサ科の植物に共通した特徴です。

イグサ科の仲間は皆雰囲気が似ているので、はじめは識別が難しいかもしれません。また、クサイは個体の変異が大きく、花序の枝の出方や苞の長さに個体差があるので、識別には慣れも必要です。

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踏圧の低い路傍に生育すると立ち上がり大きくなる。愛知県長久手市にて(6月4日)。

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駐車場でしょっちゅう踏まれる個体は草丈が低い。岐阜県関市(6月24日)。

最近はアメリカクサイといった外来種の定着もあり、類似種との識別はより難しくなってきていますが、路傍にはえていれば、クサイと考えて概ねよいと思います。