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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

河川敷の植物-291.オギ-

「河川敷の植物」と言われ真っ先に思い浮かぶ植物の一つが、このオギです。秋の河川敷を歩くとオギの穂がさわやかな風に揺れ、散歩にいい季節になったな~と思います。

 

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東京都府中市にて(10月17日)。遠目には爽やかだけど中に入るのは大変です。

 

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神奈川県茅ケ崎市にて(10月19日)。穂だけ見るとススキにそっくりです。

オギはイネ科ススキ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州の河川敷を中心に分布します。学生時代に私の友人が河川敷の植生について調べていて、日本全国に分布するオギといえども、河川敷のどこにでも分布するわけではなく、オギは細かい粒の土壌(シルト質土壌)が堆積した立地を中心に生育することを明らかにしていました(たしかそうだったと思う)。

 

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茨城県稲敷市にて(10月7日)。水際から少し離れたところに群落を形成することが多い。

河川を横断方向(堤防~水辺の断面)で見た場合、オギは数年に一度洪水で水につかるような高水敷や比高の高い低水敷に分布する傾向があり、頻繁に水につかる水際付近の砂礫中心の土壌環境には分布しないようです。同様に河川を縦断方向(上流~下流の断面)で見た場合、オギは大きな岩や礫が多い上流域にはあまり分布せず、河川敷が広くなって細かい粒の土壌が溜まりやすい中流域~下流域に分布します。また、オギは土壌の粒径が細かくても常時水につかっているような場所には生育しないので、オギは水辺の植物ですが、湿地の植物とは言えないようですね。

 

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茨城県筑西市にて(10月10日)。中央手前の小規模な群落がススキで、奥の広い群落がオギ。河川敷の中下流ではオギが優占することが多い。生え方も少し違いますね。

オギは地下茎で増えるため群生し、とても大きな群落を形成します。河川敷の広い大河川では広大なオギ原が続くところも珍しくありません。オギが河川敷の細かい粒径の柔らかい土壌を好むのは、地下茎を縦横無尽に伸ばすのに都合がよいからかもしれません。

 

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山形県川西町にて(10月20日)。山間地の斜面のススキ群落。違いがわかるかな?

一方、オギに似たススキは地下茎を伸ばさずに株が大きくなることによって成長します。そのような成長の仕方のため、礫があってもそれほど影響がないのか、上流の河原で目に付くのは殆どススキだと思います。あと、山間地の斜面等に生育しているのも殆どススキですね。

 

オギの特徴は次の3点です。

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①生え方:根本は近接しますが、茎は1本ずつ立ちます。地下茎で増えるので、広範囲に面的に生育します。

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②茎の節:茎の節の部分に毛が密生するのが特徴です。類似種のススキは節の部分が無毛です。ただ、花の咲いていない若い茎の節を見ると、一部だけにわずかに毛の出るような個体があり、正直、これはオギでよいのか?と思うことがあります。茎の節の毛は典型的な大きな個体では密生すると思ったほうがよいのかもしれません。

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③花:花には銀色の長毛が密生します。長毛はススキよりも長く、ススキのような硬い毛(植物用語でのぎという)はありません。

類似種はススキの他にトキワススキ、カリヤス等いくつかありますが、河川敷に群生していればオギと思ってよいでしょう。そして、花にのぎが無いことを確認すれば、間違いなしです。