身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

花序について(その1)

図鑑の葉の説明文以上に難解なのが、花序(かじょ:花の集合)の説明文だと思います。私は職業柄、花序の説明文自体は理解できるのですが、「この花がこの花序に該当する」というのがわからないことが時々あります。多分、完全には花序のつくりについて理解できていないのかもしれません。そんな私の解説文なので、なんとなく見てもらえればよいと思います。また、花序の種類がわからなくても、花や花序は写真で見比べればわかることが多いので、完全に理解できなくても大丈夫だと思います(私がそうですし・・・)。

●総状花序(そうじょうかじょ)
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この花序は例えるなら試験管ブラシのような花序です。花序の軸は1本で分枝することはありません。花序の軸は通常長めで、軸に柄のある多数の花がつきます。この時、花は互生(ごせい:交互に着く)してつくのも特徴です。一見すると総状花序のように見えるのですが、花が1箇所から2-3個ついたり、ごく短い枝が出て2-3個つくような場合があり、そのような花序は偽総状と呼ぶ場合もあります。

●穂状花序(すいじょうかじょ)
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この花序は総状花序と似ていて、枝分かれしない花序軸が1本あり、そこに多数の花がつきます。総状花序との違いは、花に柄が無い点です。ただ、すご~く柄の短い花をつける場合、総状花序と呼ぶのか、穂状花序と呼ぶのか迷いますね。穂状花序は下垂するものを尾状花序(びじょうかじょ)ミズバショウマムシグサのような太い花序軸のものを肉穂花序(にくすいかじょ)と区別する場合もあります。

●散形花序(さんけいかじょ)
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この花序は球状、傘状、半球状になるような花序です。花序の軸は1本で分枝することはなく、軸の先端に柄のある多数の花がつきます。この仲間の花序は、花序の軸が複数分枝して、複数の散形花序の集合となることが多いと思います(後述の複散形花序等)。

ここまでは単独の花序で、目にすることも多く、比較的わかりやすいと思います。次にこれらの花序が複数組み合わさったものを紹介します。この辺りからちょっとわかりづらくなってくるんですよね

●複総状花序(ふくそうじょうかじょ)
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この花序は総状花序が花序の軸に互生していくものです。軸に多数の小さな試験管ブラシがついている感じです。花序の形は全体的に円錐形になるので、円錐花序と表現する時もあります。

●複散形花序(ふくさんけいかじょ)と散形総状花序(さんけいそうじょうかじょ)
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複散形花序は花序軸の先端に多数の散形花序がつくものです。散形花序が半球形のものが多いので、複散形花序になるとさらに大きな半球状、傘状の花序になります。セリ科の植物はたいてい複散形花序をつけます。散形総状花序は散形花序が花序の軸に互生していくものです。こちらは大型の花序になると円錐形になるので、散形状の円錐花序と呼ばれる時もあります。ウコギ科の植物が複散形花序をつけることが多いです。

●複散房花序(ふくさんぼうかじょ)と集散花序(しゅうさんかじょ)
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どちらの花序も花序の枝が明瞭で、半球状もしくは傘状となる点で複散形花序に似ています。複散形花序との違いは枝分かれの仕方です。複散房花序は散房花序が花序軸に多数集まって傘状になったものです。ここでいう散房花序とは、短い軸に少数の柄のある花が互生する花序で、総状花序と散形花序の中間的な花序をさします。多散花序集散花序が花序軸に多数集まって傘状になったものです。ここでいう集散花序1箇所から1-複数分枝する花序を指します。集散花序は枝分かれの仕方によって多散花序のようにいくつか呼び名がありますが、分枝が多かったり、柄が短かったりするとどうなっているのかさっぱりわからなくなり、集散花序の集合からなるものはまとめて集散花序と呼ぶ時もあります。

●円錐花序(えんすいかじょ)
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この花序は花序の最小単位がどのような花序でも、とにかく花序全体の形が円錐形になっている花序です。花の数や、花序軸の分枝の長さや、分枝の多さに関係なくまとめられるので非常に便利な呼び名です。全体的には目立つ大きな花序がこれに該当すると思います。


その他にもいろいろ花序の呼び名はありますが、これだけ理解できれば十分だと思います。用語については書籍によって多少の違いがあると思いますが、今回は「図説 植物用語辞典」(清水建美著.2002年.八坂書房)、「改定新版 日本の野生植物」(平凡社を参考にしています。