身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

毒のある木-304.アセビ-

アセビは早春の山を彩る花木ですが、有毒の植物としても知られています。

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岐阜県養老町にて(4月20日)。産地記載無いものは撮影日・撮影場所同じです。

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日当たりのよいところの個体は特に花付きがよい。

落葉樹の葉が芽吹く前の山では、青々とした緑色の葉に白い筒型の多数の花がとても映えます。整った形の花からは毒のある植物には見えませんが、アセビを漢字で書くと「馬酔木」となります。馬が間違えてこの葉を食べたら毒でフラフラになったという事象から、このような漢字になったようです。硬い常緑広葉樹の葉なので、人間がこの葉を食べることはないと思いますが、家畜では誤食による中毒症状が報告されています。家畜が中毒になるくらいなので、毒成分としては強力なようですが、致死率は高くないようです。毒の主成分はアセボトキシンだそうです(「新装版野外毒本」羽根田治を参考にしました)。アセビは植物体全体に毒があるので、風流だからといって花を天ぷらなんかにして食べないで下さいね。

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アセビは庭木としても重宝されます。我が家では膝丈ぐらいの個体が約10年で花をこんなに咲かせるようになりました(3月7日)。

アセビツツジアセビ属の常緑低木(じょうりょくていぼく:冬にも葉がついている、4m程度以下の木本)で、本州(宮城県以南の主に太平洋側)・四国・九州の山地に分布します。ツツジ科の植物なので乾燥に強く、尾根付近や岩場の急傾斜地等にまとまって生育します。

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養老山の途中で見た少し変わった樹林。常緑樹の多くがアセビからなる、アセビ群落。この山はニホンジカが多いので、この群落の形成に一役かっているのかな?

ニホンジカアセビに毒があることを知っているので、基本的にはアセビを食べません。ニホンジカの多い地域ではアセビばかりが食べ残され、アセビと競合する植物がなくなり、樹林内にアセビばかりが茂っているといった森も見られます。アセビの花の多い森はきれいな森ではありますが、ゆがんだ生態系を反映した森なのかもしれません。

アセビの特徴は次の3点です。

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①全体容姿と生育環境:樹高5m程度にまでなる常緑低木です。尾根や岩場、急傾斜地といった乾いた環境に多く生育します。

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②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)しますが、枝の上部に狭い間隔で互生するため、上から見ると車輪状に葉がついているように見えます。形状は狭い楕円形~倒披針形(とうひしんけい:葉の上方が幅広な、かなり細長い卵形を反対にしたような形)で、大きさは4~7cm程度で、葉柄は明瞭、縁に鋸歯があります。質感は柔らかい革質で、殆ど無毛です。

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③花と花序:枝先に下垂する円錐花序(えんすいかじょ:枝が多数分枝して、円錐形の形となる花の集まり)をつけ、6-8mmのつぼ状の花を多数つけます。花序の形は小型の場合は総状だったり、総状花序が複数ついたり、形状は様々です。花の色は基本的には白色です。

常緑広葉樹で白色のつぼ状の花をたくさんつける自生の植物は、アセビ以外にはありません。花が咲いていれば似た植物はありませんが、葉の形も特徴的なので、慣れれば葉だけでもわかります。屋久島には変種のヤクシマアセビ、沖縄には変種のリュウキュウアセビがあるようです