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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

2020年の出会いベスト5(第3位)-341.キシュウナキリスゲ-

この植物も初見ではなく久々の再開です。第3位はキシュウナキリスゲです。

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静岡県にて(10月16日)。シカの多い地域だけど食べられてなかった。よかった。

ただ、キシュウナキリスゲは毎回野外ではちゃんと認識できません😅。例えるなら街中や会場で顔見知りの人と会って「どうも久しぶりです。ご無沙汰してます。」なんて会話をしながら、「この人○○さんだったかな…」という感じです。そして自宅に戻って写真や名刺を見て、「あっ、やっぱ○○さんでよかったんだ…」といった感じです。キシュウナキリスゲは標本にしてちゃんと調べてからじゃないと、自信を持って判断できません。

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静岡県産。類似種のナキリスゲに比べると少し大きい印象がある。

今回改めてキシュウナキリスゲの標本をしっかりと観察してみましたが、実はわりと簡単に覚えられるスゲなのかもしれません。そもそも秋に開花結実するスゲの仲間は本州では10種以下と思われます(しっかりと確認していません。なんとなくです)。これだけ聞けば、10種程度覚えておけばよいのだから、簡単じゃないかと思いますよね。でもキシュウナキリスゲが所属するナキリスゲのグループは、皆結構似ているんですよね…😑。それと検索表を見ると、果胞の大きさが識別点になっているんですけど、これが曲者で、せいぜい1-2㎜の差しかないし、大きさがかぶっていたりすることもあるんですよね😑。1㎜の大きさの違いって、並べて見れば違うとわかるけど、単体でパッと見た時、これは大きいとか小さいとか、なかなかわからないんですよね~🤔。そんなこともあって、これまではキシュウナキリスゲはボヤーッとしか覚えていませんでした。ところが今回、果胞の大きさだけでなく、毛の生え方にも特徴があることがわかりました(後述)!これで次からは現地で同定できるかもしれません!😆

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静岡県にて(11月16日)。結構重そうに頭を垂れていることが多い。

キシュウナキリスゲはカヤツリグサ科スゲ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、ナキリスゲ節のグループに属しています。本州(関東以西)~九州の暖地の林内に生育します。

キシュウナキリスゲの特徴は次の4点です。

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①全体容姿:株状になり、膝丈程度の大きさになります。花茎は垂れることが多いので膝丈程度ですが、茎自体は長いものでは1m以上になることもあるようです。

②葉:葉は無毛でやや硬く、濃い緑色です。葉は細めで幅2.5-4㎜程度です。

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③小穂のつき方:小穂のつき方は変わっていて、全ての小穂雄雌性(先端が雄で基部が雌)で、かつ小穂には明瞭な柄があります。さらに多くのスゲの仲間は1個の苞(ほう:小穂や花の下に付く小さな葉)や鞘に対して1個の小穂しか出ないのですが、キシュウナキリスゲは、1個の鞘に対してたいてい2個の小穂が出ます(ナキリスゲ節共通の特徴)。

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④果胞:果胞は卵形で、長さ3.5-4㎜で、ナキリスゲ節の中では少し大きめです。果胞には毛があるのですが、陵の部分にしかなく、面の部分はほぼ無毛です。この毛の生え方が類似種のナキリスゲと大きく異なります。柱頭は2裂し、種子はレンズ型です。

類似種としてはナキリスゲ節で最も普通に見られるナキリスゲがあげられます。ナキリスゲも大きなものは茎が70㎝近くになることもあるので、全体の大きさだけではキシュウナキリスゲと区別ができません(でも大きいナキリスゲ類は怪しむ価値はあります)。両者を区別するには果胞をしっかり見る必要があります(写真参照)。