2020年の出会いベスト5(第2位)-342.オオキツネノカミソリ-
今年は初めて出会った植物が比較的少なかったのですが、第2位のオオキツネノカミソリは初めて出会った植物でした。ただ、写真を撮影している時はキツネノカミソリだと思っていました😅(ごめんね~)。
岐阜県飛騨市にて(8月12日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。
オオキツネノカミソリという植物自体は知っていましたが、私の頭の中では西日本の暖地に多い植物というイメージでした。今回、オオキツネノカミソリと出会ったのが岐阜県でも比較的冷涼な飛騨地方であったため、オオキツネノカミソリが生育するなんて、全く想像もしていませんでした。現地調査が終わりに近づいたころ、自宅で写真整理をしていて、「キツネノカミソリの岐阜県分布はどんなもんかな~」と思って岐阜県植物誌を開いたところ、「県内にはオオキツネノカミソリも分布するんだ~」と初めて認識しました。そういえば、写真の個体はやけに雄蕊が長かったな~と思って見なおしてみて、ありゃ、オオキツネノカミソリだ…という具合です。これだけきれいな花をつける初見の植物だったのですが、出会い方はなんとも締まりのない出会いとなってしまいました。
やや湿った明るい森の中や林縁に生育していました。
それにしても夏の緑の濃い森の中ではオレンジ色がよく映えます。遠くから見ても、「何だあれ?」という感じになります。ちょっとキツネに騙されたような感じです。あと、姿も変わっていますね。茎がニョキッと出てきて、その先に大きな花だけをつけます。こんな花よく見たことありますよね?そうそう、ヒガンバナ!
ヒガンバナに比べると花の数が少ないし、色もオレンジなので毒々しさは無い。
オオキツネノカミソリはヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州(関東以西)~九州に分布しています。暖地に多い傾向にあると思っていましたが、意外と分布は広いようです。やや湿った落葉広葉樹林内や林縁に生育します。
オオキツネノカミソリの特徴は次の2点です。
①葉:春に出て、夏には枯れてしまいます。長さは30-40㎝くらいで、幅は10-15㎜、色彩は淡い緑色です。
②花:花は7-8月に咲き、茎の先端に3-5個の花をつけます。花被片(かひへん:単子葉植物の仲間の花びらや萼のこと)は約7-9㎝、オレンジ色で反り返ります。雄蕊や雌蕊は花被片よりも突き出る感じになり、花被片に隠れることはありません。改訂新版日本の野生植物では、オオキツネノカミソリの開花時期が7月となっており、キツネノカミソリよりも開花時期が早いような感じでしたが、今回見た地域ではそれほど開花時期が早い印象は受けませんでした。
キツネノカミソリ。見る角度によっては雄蕊が長いようにも見えるが、オオキツネノカミソリに比べると短め。大分県竹田市にて(8月2日)。
似た植物としては基本変種のキツネノカミソリと、変種のムジナノカミソリがあります。キツネノカミソリは分布域がオオキツネノカミソリとかぶっていて紛らわしいですが、キツネノカミソリの花被片はあまり反り返らず、雄蕊は花被片と同長か少し短く、外から見た感じでは雄蕊が目立たない感じです。ムジナノカミソリは九州と対馬に分布し、花の構造はオオキツネノカミソリとほぼ同じですが、花被片が5-6㎝と短い点が異なるようです。