身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

地元で撮影した植物-177.ヒメカンスゲ-

ヒメカンスゲは低山のやや乾いた山林に生育する比較的身近なスゲ類です。山林が近くにない方にとっては、それほど身近じゃないかもしれませんね。

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岐阜県関市にて(4月30日)。この場所では急傾斜地のみに群生し、緩斜面には無かった。

このヒメカンスゲはアオスゲと同じ仲間(正確にはヌカスゲ節と呼ばれる)ですが、少し雰囲気が違うと思いませんか?違いは、この植物の名前にもあらわれているのですが、ちょっとわかりづらいかな~。ヒメカンスゲを漢字で書くと、「姫寒菅」となります。「寒菅」は寒い菅、寒い冬場も青々と生育している菅という意味です。

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岐阜県関市にて(2月12日)。冬でもこのように青々と茂ります。

なんか色合いが違うな~と思った方は、かなり勘がいいですね。ヒメカンスゲのように○○カンスゲという名前の植物はいくつかありますが、皆、常緑なのでアオスゲ類に比べると色彩が濃い緑色になるのが特徴です。また、葉も硬い感じになります。落葉樹と常緑樹の葉の違いと同じですね。

ヒメカンスゲはカヤツリグサ科スゲ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州、対馬に分布します。広域に分布する種にありがちですが、個体の変異は大きい気がします。丘陵~山地のやや乾いた樹林内に生育し、岐阜県では全域に分布します。

ヒメカンスゲの特徴は次の4点です。用語の解説はココ
①大きさと生え方:アオスゲより少し大きめで30-40cm程度、株になります。図鑑には匍匐根茎(ほふくこんけい:地中を横に這う地下茎)があるとされますが、岐阜県内のものは明瞭な匍匐根茎は殆どありません。
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②葉と地際:葉は常緑なので濃い緑色。葉の幅は2-4mmで細く、やや硬め。地際は褐色でシュロ状の繊維が多いです。
③小穂の付き方と鞘:一番上が雄小穂で、やや太め。雄小穂の下は全て雌小穂で、雌小穂はそれぞれ離れて付き(アオスゲ類のように上部にかたまらない)、雌小穂の基部の鞘は赤紫色に色づくことが多い。赤紫色の濃さは変異があります。
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④果胞:果胞は少し毛があります(時々殆どないようなものもある)。果胞の先端は少しくぼみ、くちばしの部分(先のほう)のみが熟すとやや外側に反り返ります。果胞に赤紫色の線が入る場合もあります(ベニカンスゲ)。

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ホソバカンスゲ。見た目はヒメカンスゲに似てるが果胞が違う。富山県南砺市(6月9日)。

類似種としてはホソバカンスゲがあげられますが、ホソバカンスゲの果胞の先端は鋭く2裂する点で異なります。むしろ、個体の変異が多いため、同じ種の中で、「これ違うやつ?」と迷ってしまうことがあります。「日本のスゲ増補改訂」(勝山輝男.2015)にはウスイロヒメカンスゲ、ベニカンスゲといった種内変異が紹介されています。案外、同じものと思われていたものの中に、新種が隠れているのかもしれません。