身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

谷間でひっそりと-322.サワギク-

最近はシカの食害によって森の中が異様にスッキリとしている地域もありますが、雪の多い地方はまだ比較的植物が残っています。この日歩いた岐阜県北部の山も食痕はそこまで多くない感じでした。谷をあるいているとヒョロッと少し背の高い花が咲いていました。サワギクです。

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岐阜県飛騨市にて(6月23日)。以下、記載ないものは産地・撮影日同じです。

食痕は少ないとは言っても、動物は生息しているので、シダ植物などは食べられた痕がありました。そんな場所で「動物に食べられずに花を咲かせることができてよかったね~😊」と声をかけたくなりますが、サワギクはあまりシカ(カモシカ含む)には好まれていないような気がします。他の地域ですが、食害の強い山でもサワギクは花を咲かせていたのを見たことがあります。葉をちぎってもんでみると、少し独特の香りがしたので、香りの強さが敬遠される原因の一つなのかもしれません。

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花の形を見ればキク科ということはわかりますね~。

サワギクはキク科サワギク属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州までに分布します。その名の通り沢沿いなどのやや湿った樹林内に生育しますが、湿地の植物ではないので、ビチャビチャ湿ったような環境には生育しません。

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こんな感じで小規模に群生することがありますが、背景の緑に溶け込んでしまいます。

サワギクは背丈もそこそこ高く、小規模に群生することもあるのですが、あまり目立たない植物です。それは花が小さいことと、花の集まり方にあるのかもしれません。小さな花を多数つけるキク科の植物としてはヒヨドリバナの仲間や、ノコギリソウの仲間などがありますが、いずれも花同士が密集して大きな一つの花のようになり、とても目立ちます。それに対してサワギクの花は上から見ても、横から見ても隙間があり、そのため花が目立たないのだと思います。

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長野県松本市にて(6月24日)。この個体は流れの近くに生育していた。

あとは黄色という色彩でしょうか。鮮やかな黄色であれば多少目立つのですが、サワギクの黄色はレモン色といった感じです。余談ですが、仕事で山の中にマーキングするテープも、レモン色に近い蛍光黄色は思ったより目立たないんですよね。そのせいか、マーキングに使うテープの色はピンクが多く、いろんな人達が同じ色でマーキングするものだから、どれが何の目印だかわからなくなるといったこともあります🤣。

サワギクの特徴は次の3点です。

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①全体容姿:茎は直立し枝を分けません。背丈は膝丈から腰丈ぐらいです。

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②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互につく)し、形状としては1回羽状深裂です。裂片は不規則に切れ込みがあり、茎とともにほぼ無毛です。特徴のある形なので、慣れれば葉だけでもわかります。

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③花:花は茎の先端に多数つき、花の大きさは直径1-1.5cm程度で、レモン色に近い黄色です。

サワギクは日本の固有種のようで、国内では1属1種です。そのため類似種は無く、覚えやすい植物だと思います。