身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

ササの仲間-294.スズタケ

11月下旬になるとさすがに紹介する植物が少なくなってきます。冬でも青々としている植物といって思い当たるのはササの仲間でしょうか。日本はササの国と言ってよいほどササの仲間が各地に生育しています。そんなササの仲間で近年話題になったのが、このスズタケです。

 

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福島県いわき市にて(11月21日)。断りのないものは全て撮影場所同じです。

 

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森の中一面にスズタケがはえています!この中を歩くのは至難の業。

スズタケは数年前に「中部地方~東海地方で120年ぶりの開花」ということでニュースにも取り上げられていました(記事一例)。私の住む岐阜県やお隣の愛知県でも開花が報告され、仕事で宿泊した宿のおかみさんが、スズタケを持ってきて「この花珍しいんですか?」と聞きにきたくらい話題となっていました。

 

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とてもわかりづらいですが白っぽい枯れたものがスズタケ。愛知県設楽町(11月14日)。

その後話題にのぼらなくなりましたが、ササの仲間は開花すると一般的には枯れてしまいます。ササの仲間は地下茎でつながっているので、個体の枯死ということは一定面積のササ原が枯れてしまうことを意味します。開花個体が多ければ相当面積のササ原が枯れることになり、景観的にも衝撃的です。スズタケも例外ではなく、開花後は枯死していることが報告されています。先日訪れた愛知県の設楽町でもスズタケは枯れていて、殆ど個体を見ることはありませんでした。スズタケは絶滅してしまったのでしょうか?

 

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謎のイネ科実生。多分スズタケの実生だと思います。愛知県設楽町(11月14日)。

 

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サイズ的にはこんな感じ。これが一面ササ原となる最初の一歩なんですね。

ふと歩いていると、見慣れない小さな実生がありました。11月中旬の割には青々としているイネ科の実生です。よく見るとササの仲間のように見えます。この状態で種を確定するのは難しいですが、付近には枯れたスズタケの稈があったので、スズタケの実生の確率が高そうです。今はこんなに小さな実生ですが、数はそこそこあるようでした。100年後には再びスズタケのササ原になるのでしょうか?私は到底確認することはできませんが、100年後にどうなっているか、是非とも教えていただきたいものです。

 

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スズタケはブナ林等の林床に多い中型のササで群生します。

スズタケはイネ科スズタケ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存する)ですが、タケ科と称されたこともあり、木本とも普通の草本ともちょっと異なる植物です。北海道~九州までの太平洋側の山地に主に分布しています。

スズタケの特徴は次の3点です。

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①稈:稈は直立し、密生します。高さは2.5m程度まで伸びますが、草刈りが行われるようなところでは膝から腰丈程度ということもあります。稈は背が高い割には細く、根本直径が1cmを超えることはありません。

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②稈鞘:稈鞘(かんしょう:筍の皮の部分)は稈の節と節の間の長さよりも長いため、その年に伸びた若い稈は全てが稈鞘にくるまれ、稈の緑色の部分が殆ど見えません。これが大きな特徴の一つです。

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③分枝と葉:枝は上部のみで分枝し、1節から1本しか枝が出ません。1本の枝先から出る葉の枚数が2-3枚と少ないのも大きな特徴です。葉は細身で、長さは20-30cm程度、無毛です。

ササの仲間は皆同じように見えて分類が難解ですが、スズタケは稈鞘と葉のつき方が特徴的なので、比較的簡単に認識できるササだと思います。葉の裏に毛がある場合は、ケスズという別な種類になり、ケスズの方が少し背丈が低い印象があります。

 

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花は基本枝先につきますが、地際から花茎が出ることもあるようです。

 

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約100年に一度のレアな花なのですが…。それほどありがたみは感じなかった。

今回スズタケの撮影をした福島県いわき市では殆ど開花は見られませんでしたが、一部で開花を確認しました。この後多くの花が咲くのでしょうか?それとも一部の個体の開花で終わってしまうのでしょうか?歩いていて林床の殆どがスズタケだったので、これが一斉に枯れてしまうと、どんな影響があるのか気になるところです。