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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

迷惑な植物-284.ブタクサ-

花粉症の原因といえば真っ先に「スギ」が思い浮かび、春に出る症状と思われがちです。でも、秋に花粉症の症状が出る方もいらっしゃいます。そんな秋の花粉症の原因の一つが、「ブタクサ花粉」です。

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青森県弘前市にて(9月10日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

ブタクサは北米原産の外来種で、キク科ブタクサ属の一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)です。明治初期に渡来し、今ではほぼ日本全国の河川敷や荒地に広がっています。観賞用の植物とは思えないので、何かの荷物や飼料などに紛れ込んできたのでしょうか。約1世紀半で日本全国に広がったのですから、生命力にあふれたタフな植物だと思います。

 

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この個体は膝丈ぐらい。標準的なサイズは膝丈から腰丈ぐらいです。それほど強そうな印象は受けません。

ただ、ブタクサは花粉症の原因となるわりには、それほど群生していないように思えます(個人的感想です)。大きさ的にも腰丈ぐらいなので、他の植物を圧倒するほど強い植物には見えません。そんなブタクサのタフさの秘密は、実は種子にあるようです。ブタクサの種子は土壌中で長い間休眠できる特性があるようです。ブタクサのような一年草は植生遷移が進行すると衰退してしまいます。そんな生育に不適な環境になるとブタクサの種子は発芽せずに土壌中で眠ったまま過ごします。そして火事や洪水、人為的な改変などのイベントが生じて裸地のような明るい環境になると、眠っていた種子が一斉に発芽して、1~2年という短い期間で大量の種子を生産し、その後は種子で眠って次の発芽の機会を待つといった感じでしょうか。このような種子の寿命の長さが全国に分布を広げたことと関係しているのかもしれません。

 

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去年はそんなに群生していなかったのですが、今年は大群生です!

このようなブタクサのタフな戦略を先日目にすることができました。今回のブタクサの写真撮影地は河川敷なのですが、この河川敷は去年も訪れています。去年から今年の間に河川敷のハリエンジュやイタチハギの伐採が行われ、河川敷に広大な裸地ができました。そんな裸地に去年まではポツポツしか見なかったブタクサが、今年は大群落を形成していました。あまりの景観の変化にビックリでしたが、友人は大量の花粉にまいっていました…。きっと大量の種子が土壌中に眠っていて、今がチャンスとばかりに出てきたのでしょうネ。

 

ブタクサの特徴は次の3点です。

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①葉:葉は対生(たいせい:葉が対になって着く)します。形は2回羽状複葉で、全体の形状は三角形から三角状の卵型になります。下部の葉ほど切れ込みが深く複雑になり、上部の葉ほど切れ込みが単純になります。

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②花序:花序は茎の先端と、上部で分枝した枝の先端につきます。花序は細長く、花序の7-8割は雄花で、雌花は花序の根本付近にのみつきます。たまに雄花を殆どつけずに雌花ばかりをつける個体もあります。

③花:雄花と雌花があり、雄花は皿を伏せたような形をして中にたくさんの雄蕊がつまっており、黄色です。見るだけで花がむずむずしそうです。雌花は総苞(そうほう:キク科植物の花の基部の鱗状の苞が集まった部分。普通の花の萼のように見える部分)苞葉(ほうよう:小穂や花の下に付く小さな葉)に包まれ緑色。一見すると葉が集まっているだけのように見えます。

 

全体的な容姿に特徴があるので、花が咲けばすぐにわかると思います。花粉症の方なら、植物体を見なくてもブタクサの存在に気付けるかもしれません。似たような植物にはブタクサモドキという外来種がありますが、これは葉の形が1回羽状複葉のようです。私はまだ見たことが無く、それほど分布は広がっていないとのことです。