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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

2018年の出会いベスト5-262.ヤマジソ-

2018年の出会い第2位はヤマジソです。ここまで目立つ花が多かったですが、ヤマジソはかなり地味な植物です。

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福島県いわき市にて(10月16日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

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もう花は殆ど終わっていて、結実期を迎えていました。

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残骸のような花が少しだけありました。紅紫色の小さな花をつけます。

こんな雑草みたいな植物ですが、環境省レッドリスト2018では準絶滅危惧に指定されています。準絶滅危惧というランクだと、「すご~く珍しい」という印象はなく、「多くはないけどたまに見る」、もしくは「ある地域に限れば比較的よく見る」といった印象の植物です。

ヤマジソはシソ科イヌコウジュ属の一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)で、北海道~九州に分布します。分布域が広いので、「多くはないけどたまに見る」というタイプの植物なのだと思います。ところが、実際にはヤマジソはそれほど目にすることはないのかもしれません。私はヤマジソに出会ったのはこれが2回目だと思います。初めて出会ったのは、社会人になってすぐの頃、環境省レッドデータブック(初版)が出版されたばかりの頃で、絶滅危惧植物という概念もまだ浸透していなかった頃です。先輩から「これヤマジソ」と教えられ、「ヒメジソみたいな植物だな~、ふ~ん」なんて思って素通りしてしまった感じです(今ならもっとよく見ていただろうな・・・)。その後は約20年、ヤマジソに出会うことはなく、当時の記憶も全くなくなっていた頃でした。今度は自分の目で見つけることができ、非常にうれしかったですね


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林内の林道上の個体。水分条件や栄養条件に恵まれているのか大型の個体が多かった。

「改定新版 日本の野生植物図鑑」では日当たりのよい乾燥気味の裸地に生育すると書いてあります。今回見たところはいずれも林道上だったので、裸地的な環境を好むことは確かです。林道はススキ群落脇等の明るい場所が多かったですが、林内という場所もあり、からからに乾燥するような場所には無い印象を持ちました。林道は車では通れないような細い道や古い道が多く、林道に生育していたものの、踏圧に対しては強くないような雰囲気です。こんな感じの環境にはえて、この地味な様子だと、人知れず消えてしまっているのかもしれません・・・

ヤマジソの特徴は次の3点です。
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①個体の大きさと茎:個体の大きさは3-30cm程度で、小型の個体は直立して殆ど分枝しませんが、大型の個体は多数分枝して、茎は這い気味に伸びます。茎の断面は四角形(シソ科共通の特徴)で、茎全体に下向きの短毛を密生します。
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②葉:葉は対生し、大きさは葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)部分で1-2cm、形状はひし形、半分より上方に明瞭な鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があります。長い葉柄(ようへい:葉の柄の部分)がありますが、葉柄は上部に行くほど短くなり、花序近くでは目立たなくなります。
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③花序:花序は1-4cmと短く、花を密集してつけます。花の付け根には苞(ほう)と呼ばれる小さな葉があり、苞は萼の長さとほぼ同じぐらいと大きいのが特徴です。


よく見る似たような植物としてはヒメジソとイヌコウジュがあり、いずれも花序が長く、花と花の間の隙間が目立ち、苞が萼よりも顕著に短い点でヤマジソと異なります。ヒメジソとイヌコウジュは時々10cm程度の小さな個体があり、そのような個体はヤマジソと非常に似ていますが、苞が萼の比率を見れば間違えることはないと思います。

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イヌコウジュ。河川敷等に生育し、植物体は大きく直立する。東京都八王子市(10月18日)。