花粉の季節だ~ -265.スギ-
立春が過ぎ暦の上では春、早くも花粉の話題が取り上げられるようになってきました。スギは花粉症の原因となる木なので、名前を知らない方はいらっしゃいませんね。
茶色の粒が雄花。ここから花粉を飛ばします。岐阜県関市にて(2月3日)。
スギの花粉はヒノキよりも早く飛散し、私の住む岐阜あたりだと3月上旬あたりがピークのようです(ヒノキは4月上中旬がピーク)。ただ、実際には1月下旬頃から少しずつ花粉を飛ばしているようなので、花粉症の人はそろそろ準備をしたほうがよいのかもしれませんね。
スギは裸子植物でスギ科スギ属とされていましたが、最近の分子系統に基づく分類ではヒノキ科スギ属になるようです。スギは常緑針葉樹で、日本で最も巨大になり、寿命がとてつもなく長い種類です。寿命が長いから巨木になると言ってしまえばそれまでですが、日本一高い樹木はスギで樹高が62m(京都府の「花脊の三本杉」)、日本一太い木もスギで幹周囲長が1639cm(屋久島の「縄文杉」)(出典は林野庁)、そして縄文杉の樹齢は諸説あるようですが約5000年とか言われています。もう、想像できないほどの大きさですネ。
スギ植林の林内の様子。手前の太い木はよい材になりそう。岐阜県関市(4月9日)。
さらにスギがすごいのは大きさだけでなく材としても優れていること。弥生時代には既に木材として頻繁に利用されていて、現在もその利用価値は高いですね。そんなわけで今では北海道と沖縄を除く日本全国で植林されています(北海道の道南ではわずかだけど植林を見たことあります)。なんとスギやヒノキの植林は室町時代から行われていたというのですから、驚きですネ!
このように、スギは昔から伐採や植林が行われていたこともあり、本来の自生の個体というのがよくわからなくなってしまっています。一応、スギの分布は本州(青森県まで)、四国、九州(屋久島まで)となっています。スギの自然林として有名なところでは屋久島のスギ林がありますが、東北地方や日本海側の地域等にも点々とあるようです。その他の名もないところの林は基本的には植林と考えてよいのかもしれません。ただ、神社などに行くと植林起源と思われる樹林の中に巨木がぽつんとまじっていることもあります。そのような大木はひょっとしたら天然の個体なのかもしれません。
さて、これだけ身近な植物であるスギですが、自信を持って「これがスギだよ!」と言える人はどれくらいいらっしゃいますかね。うちの息子も残念ながら、こないだの時点ではスギとヒノキの区別が微妙でした。
「君子危うきには近寄らず」
花粉症の季節が近づいてきているので、スギは覚えておいたほうがよさそうですね。
スギの特徴は次の2点です。
①全体の容姿:樹高は10m以上になり、普通に20m以上になります。幹は直立。常緑なので冬も青々としていますが、花粉を出す2-3月はやや赤茶色になります。ヒノキに比べるとモコモコした感じになります。
②葉:葉は5-10mm前後で密に互生します。根元は太く、先はとがり、少し曲がります。茎と葉の境がないような感じで、枯れるときは葉が1枚ずつ落ちるのではなく、茎ごと落ちます。
どうですか、スギとヒノキとは全然違うでしょ。よ~く見れば、スギに似たような植物はありません。スギとヒノキは同じくらいよく植林される樹木ですが、スギは谷から斜面下部に、ヒノキは尾根から斜面上部に植えられ、両種は形態だけでなく生態的にもだいぶ異なるようです。
私はまだスギの自然林の中を歩いたことがないので、いずれは屋久島にも行ってみたいな~。