園芸みたいだけど野生です-280.ヒルガオ-
朝に咲くとアサガオ。夕方に咲くとユウガオ。夜に咲くとヨルガオ。そして昼に咲いているのがこのヒルガオです。ちなみにこの4種のうち、「かんぴょう」の原料となったり味噌汁に入れたりするユウガオはウリ科の植物で、ヒルガオを含む他の3種はヒルガオ科の植物です。
東京都日野市にて(7月8日)。真昼間に咲きます。夏休みっぽい花ですね~。
ヒルガオはヒルガオ科ヒルガオ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、ほぼ日本全国に分布します。園芸種に負けないくらいきれいな花をつけますが、れっきとした在来の植物です。ちなみにアサガオ、ユウガオ、ヨルガオは在来の植物ではありません。アサガオは江戸時代から園芸品種が生み出されていることから、いかにも在来の植物のようですが、奈良時代に中国から渡来したとのことです。
これだけきれいな花を咲かせるヒルガオですが栽培されることは殆どありません。なぜ栽培されないのか?その原因の一つはヒルガオがあまり種子をつくらない点にあると思います。今は違うのかもしれませんが、昔の園芸品種の多くは「いろんな形状の花を交配させて種子をつくらせる」といったことを行って偶発的に得られた個体を栽培したりして品種を作り出してきました。ですから種子が殆どできないという特徴は、園芸品種をつくるのに向かない植物といえます。そんなわけで園芸種並みの花をつけますが、現在まで多くの人に見向きもされず、雑草として扱われてきました。
ヒルガオは種子をあまりつけないので(私はまだ見たことがない)、基本的には栄養繁殖(地下茎)のようです。そのため、群生していることもありますが、いたるところで見かけるという感じでもありません。河川敷の草地や林縁、耕作地周辺のやぶといった平野部では比較的目にしますが、山に近いところではあまりみかけません。最近ではヒルガオの主要な生育地である河川敷では、ヒルガオよりも外来種のアサガオ類(ヒルガオ科サツマイモ属)の方が優占していることがあります。外来種のアサガオ類は一年草のものが多く、よく種子をつけます。きっと増水や河川工事等で種子を広範囲に分散させることによって、幅を利かせるようになったと思われます。
① 全体容姿:つる植物でヨシやオギといった他の植物にからみつきます。
② 葉:狭卵形~卵形の葉を互生(ごせい:葉が交互に着く)します。葉の基部が矛状に張り出しますが、あまり横方向に強く張り出しません。中央脈に対して広い角度で出る側脈がはっきりと見ることができます。
③ 花:花の基部には1cmくらいの2枚の苞葉(ほうよう:小穂の下に付く葉)があり、柄はほぼ円形で翼(よく:ひれ状のひだ)が出ません。花はアサガオに似た形状で淡いピンク色、直径5-6cm程度です。類似種に比べるとピンク色が濃い気がします。