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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

野菊の代表-288.ノコンギク-

今年は10月になっても日中は暑い日が続いています。普通なら涼しげな秋空に野菊が映えるところですが、今年はきれいに咲き誇っている野菊をまだ見ていません。日本の野菊の代表といって、真っ先に思い浮かぶのは、このノコンギクです(私見です)。

 

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岐阜県高山市にて(10月6日)。これは直立して花付がよく切り花にできそう。

 

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岐阜県八百津町にて(10月26日)。林道沿いに群生していました。きれい~。

 

ノコンギクはキク科シオン属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州まで、ほぼ日本全国の野山に分布します。明るい環境で花を咲かせるため、樹林内には少なく、林縁や草地で多く見られます。日本各地に分布し、生育環境も川岸近くから低山の山頂付近までと広いため、個体の変異が大きいのがやっかいです。

 

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北海道稚内市にて(8月25日)。エゾノコンギクと以前は区別されていましたが、本州のノコンギクと基本的には違いはないと思います。

 

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センボンギク。河原や河畔岩場に限定して生育します。三重県紀宝町にて(10月13日)。

旧版の「日本の野生植物」という図鑑では、エゾノコンギク、ハマコンギク、ホソバコンギク、タニガワコンギク、ヤクシマノギク、センボンギク、園芸品種のコンギクと細分されていましたが、新版の「日本の野生植物」ではヤクシマノギクは別種とされ、ノコンギク、センボンギク、ハマコンギク、園芸品種のコンギクと、少しまとめられた感じになりました。私は新版の大雑把な分類に賛成です。

 

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ユウガギク。白い花が多い傾向にありますが、淡い紫色になることも。新潟県阿賀野市にて(10月12日)。

ノコンギクは上述したように亜種、変種と細分されるのもやっかいですが、ヨメナ、ユウガギク、シロヨメナ等の同じような淡紫色から白色の花をつける野菊の存在がさらに混乱を引き起こします。野菊の仲間は全体的に似た植物が多く、識別の難しい分類群ですが、実や、葉の形なんかもしっかりと観察すると、違いがなんとなくわかってくるので、観察のしがいのある面白い植物だと思います。

とはいっても初心者ですぐに違いを把握するのは難しいので、とりあえずはきれいな野菊を探しに秋の散歩にでもでかけましょう。そして気長につきあっていくことをお勧めします。

ノコンギクの特徴は次の4点です。ここで示した写真の多くは北海道産のノコンギクです。私は本州のノコンギクと北海道のノコンギクに違いはないと思っています。

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①茎:全体に上向きの短毛があります。
②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)します。形は楕円形~狭楕円形、狭卵形、ややとがった鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があります。葉の形は多少変異がありますが、葉の先がスラーッと伸びることはないです。全体に短毛を散生し、ごわごわした感じがあります。

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③花:花の直径は2-2.5cm程度で、花弁のような舌状花は、淡い紫色のことが多いです。舌状花の色は白っぽくなったり、紫色が濃くなったりしますが、園芸植物のような濃い青紫色になることはないです。

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④種子:種子の先端に冠毛(かんもう)というタンポポの綿毛に似た器官があります。ノコンギクの冠毛は種子の長さよりも長いのが特徴です。この冠毛の長さが、類似種のヨメナ、ユウガギク等との大きな違いになります。

 

よく目にする類似種は、西日本ならヨメナ、オオユウガギク、東日本ならカントウヨメナユウガギクでしょうか。いずれの種類とも、冠毛が非常に短い点でノコンギクと区別できます。あとシロヨメナも似ていますが、シロヨメナは花が紫色帯びることはなく、葉も典型的なものはノコンギクより細い点で異なります。