身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

初夏と言えばスゲでしょ!-277.ヤワラスゲ-

スゲを見るにはよい季節になりました。ヤワラスゲは園芸的な価値があるとまではいいませんが、特徴的な容姿をしたきれいなスゲだと思うので、是非覚えてほしいスゲの一つです。

イメージ 1
岐阜県海津町にて(5月4日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

イメージ 2
ちょっと寝てしまったヤワラスゲ。小穂がたくさんつくとトゲトゲ感がすごいです。

ヤワラスゲという名前を聞くと柔らかい優しそうな雰囲気のスゲを想像しますが、小穂(しょうすい:解説参照)はトゲトゲしく、思ったより柔らかい雰囲気ではありません。どのあたりが「ヤワラ」なのかはわかりませんが、葉は鮮やかな緑色で比較的柔らかい雰囲気があります。ただ、他のスゲに比べて特に柔らかいというと、そうでもないような気がします。

イメージ 3
結構きれいなスゲだと思いませんか?とても特徴的なスゲです。

ヤワラスゲはカヤツリグサ科スゲ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、ミヤマシラスゲ節というグループに属しています。北海道~九州までの広範囲に分布し、河川敷の樹林内や林縁でごく普通に見ることができます。グチャクチャ湿った樹林ではなく、やや湿っている程度の樹林や林縁に生育します。河川敷の樹林はやぶ蚊が多いので、なかなか入る機会はないと思いますが、今の時期なら虫も少ないと思います。藪をかき分けずに、道沿い(踏み跡や獣道を含む)を歩く程度で見ることができると思うので、気になった方は探してみて下さい。

ヤワラスゲの特徴は次の3点です。
イメージ 4
全体容姿と基部の鞘:膝丈程度のスゲで株状になります。個々の株は明瞭に区別できますが、結構群生することが多いです。基部の鞘はやや硬く、赤紫色に着色します。
イメージ 5
小穂のつき方:一番上に1個の雄小穂がつき、その他は雌小穂で、上から1-2個程度の雌小穂は雄小穂と接するようにつきます。下に行くほど雌小穂の間隔が広がります。雌小穂の柄は短くほぼ直立しますが、最下部はやや長い柄があることもあります。雌小穂の基部には鞘があり、鞘の先には小穂よりも長い苞葉(ほうよう:小穂の下に付く葉)があります。
イメージ 6
雌小穂と果苞・鱗片:雌小穂は円柱状で1.5-3.5cm程度、多数の果苞を開出気味につけます。果苞は5-6mmで先端はトゲ状に細くとがります。鱗片は果苞と胴長かより短く、先端は針のようにとがります。

非常によく似たスゲとしてはアワボスゲとベンケイヤワラスゲがあげられます。

イメージ 7
アワボスゲ。岐阜県可児市にて(5月25日)。小型のヤワラスゲと間違えそうになる。

アワボスゲは果苞が小さく先端の尖り方がヤワラスゲと若干異なります。

イメージ 8
ベンケイヤワラスゲ。鹿児島県薩摩仙台市にて(4月27日)。これは違いが難しい…。

ベンケイヤワラスゲは鱗片が果苞よりも長い点と基部が赤紫色にならない点が異なります。ただいずれも希少なスゲでそうそうお目にかかれないので、非常によく似たスゲは殆どないと言っても過言ではないかもしれません。