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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

覚えておきたい落葉高木-267.イヌシデ-

イヌシデがわかれば、だいぶ植物を見るのに慣れてきた感じではないでしょうか。私も調査をはじめた頃、イヌシデを識別するのにはだいぶ苦労しました。

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静岡県川根本町にて(5月17日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

イヌシデはカバノキ科シデ属の落葉広葉樹で、高さ15m以上に達する高木です。本州(岩手・新潟以南)・四国・九州の低山から山地に分布し、気候的にはコナラの生育する範囲とだいたい同じような気がします。

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こちらは樹高2m程度の幼樹。個体数の多い地域では高木から実生まで様々なサイズがある。

イヌシデはうちの近所ではあまり見かけない木ですが、学生時代フィールドにしていた多摩丘陵には多く、雑木林の主要な構成種となっていました。そのため、調査をするにあたってこの木は必ず覚えなければならい樹種でした。まず、何が苦労したかといえば、一緒に生育するアカシデ(これもシデ属です)と区別することが難しかったことです。最初に教わった時は、「こんなんで種類を分けるのか~」と思ったものでした。識別するにあたってかなり標本を取りましたし、標本がとれないような高木は、どれだけ双眼鏡を覗きこんだことか・・・。

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典型的なものを並べればそれほど迷わない気もするが、初心者には難しい・・・。

社会人になった頃にはイヌシデ、アカシデは当然区別できるようになっていましたが、学生時代と異なるフィールドに行くと、イヌシデ、アカシデ以外のカバノキ科の植物が当然出現します。イヌシデを含むカバノキ科の植物は、これといった特徴のない葉が多く、皆雰囲気の似たような葉をつけるので(同じ科なので当然ですが)、迷うこともしばしばありましたネ。さらに植生図なんかを描くようになると、双眼鏡のみで樹種を判断することもあり、正直お手上げみたいな時もありましたネ・・・。
今でも距離が遠いと識別できない時もありますが、とりあえず葉の輪郭が見えれば、イヌシデは間違いなく区別できるようになりました。「習うより慣れろ」といった感じでしょうか。

イヌシデの特徴は次の3点です。
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①樹皮:樹皮は灰色に近い褐色で、浅い溝が縦に入り、白っぽい縦線も入ります。白っぽい縦線は若い木や成木の上部の幹で目立ちます。樹皮の特徴はアカシデとの識別点にはなりづらいですが、他の木との識別点にはなります。樹皮が特徴的なので、慣れれば根元に行かなくてもイヌシデかアカシデだなという見当がつけられます。
②若い枝:若い枝は緑色で、肉眼でも見える毛が密生します。ただし、夏を過ぎた枝は毛が少なくなってきます。アカシデは若い枝が赤味を帯びることが多く、殆ど無毛です。
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③葉:葉は互生し、卵形~狭卵形、縁には不ぞろいな細かい鋸歯があり、長さは4-8cmです。葉の先はとがりますが、アカシデほど極端に細くはなりません。葉柄や葉の両面に伏した毛があるのが特徴(アカシデは殆ど無毛)ですが、夏以降の葉の毛は少なくなります。


類似種としてはここまで頻繁に出てきたアカシデの他、同じ属のクマシデやサワシバが似ています。クマシデやサワシバはイヌシデよりも葉が細長いので、側脈の数がだいぶ異なる点で見分けられます。

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クマシデ。イヌシデに比べると細長いので区別は簡単。静岡県川根本町(5月17日)にて。

ハンノキ属のヤシャブシも雰囲気は似ていますが、葉が硬いので、手にとれば違いがわかると思います。カバノキ属のミズメも似ていますが、樹皮が全く異なります。よく似ているのはこのあたりだと思いますが、最初のうちはこの他の木とも見極めるのが難しいかもしれません。