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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

クリスマスの木といえば…-295.モミ-

うちの近所の小学校でも、毎年冬になると(12月だけだったか?)、駐車場の大きな針葉樹に電飾を飾りつけ、クリスマス気分を盛り上げています。ちなみにその針葉樹はモミではなく、ヒマラヤスギです。みんなあの木をモミの木と思っているのかな…?

 

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福島県いわき市にて(11月22日)。以下、断りのないものは撮影日・撮影場所同じ。

クリスマスに関係する木といえば、モミの木を想像する人が多いと思いますが、山で実際にモミの木がわかりますか?クリスマスカードに描かれるように、モミが常緑の針葉樹だということは想像できますよね。

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常緑針葉樹がモミ。木の先端が円錐形で斜め上方に力強く伸びた枝が特徴的。

モミはマツ科モミ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく:冬にも葉がついている、10m以上に成長する木)で、本州(秋田・岩手県以南)~九州の山地に分布します。私は太平洋側にしか分布していないものと思っていましたが、石川県とその周辺あたりはわりと分布しているようで(「日本の固有植物」(加藤・海老原編.2011))岐阜県でも飛騨地方にまで分布しています。木の先端がきれいな三角錐になる樹形が特徴で、こんな木を見ると、北海道や日本の亜高山帯といった寒冷な地方を想像してしまいますね~。

 

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ミズナラやコナラと混生するモミ。樹高は20mぐらいで、落葉樹よりも高い。

ところが、モミは他のモミ属に比べると低い山(普通は1000m以下)に生育する植物で、イヌブナやコナラ、ミズナラ等と混生するか、ツガとともに小規模な針葉樹林を形成します。私が学生時代に歩いた多摩丘陵(標高200m未満)なんかでも普通に見ることができました。
モミ属の木に共通すことですが、モミは格好のよい植物です。クリスマスツリーにぴったりということからもわかりますが、幹はまっすぐに伸びることが多く、樹高が30mを超えることもあるようです。二次林(にじりん:自然および人為によって樹林が破壊され、その後再生した樹林)なんかでは、モミが他の木々よりも頭一つ以上抜き出ていたりして、カッコよさが目立ちます。

モミの特徴は次の3点です。

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①幹:幹は直立します。若い木や幹の上部の樹皮は比較的平滑で皮目(ひもく:樹皮にあるイボ状の点)があります。古くなると少しひび割れてきますが、それほど明瞭ではありません。

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②枝:今年伸びた枝は淡褐色で短毛がはえます。2年目以降の枝になると毛がなくなることが多いので、この特徴は1年目の枝で確認するのがよいです。

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③葉:葉の先端が2裂するのが特徴です(モミ属共通)。この特徴は低木の若い枝で顕著ですが、高木の上部の葉は裂片が丸くなり、先端が2裂するというより、先端が窪む程度になります。また、高木の木の葉は枝に対して立体的につきますが、低木の木の葉は枝に対して平面的につきます。同じ種類の葉にはとても見えませんね(笑)。

モミ属の木は全て似ている上に、類似種のトウヒ属、ツガ属といった針葉樹が混生すると、なかなか種を見分けるのは難しいです。慣れてくると属の違いは樹形や枝ぶりで見分けられるようになりますが、かなり見慣れないときびしいです(私も久々に高い山に行くとわからなくなります)。ただ生育している環境や地域で、ある程度種の絞り込みができます。

 

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岐阜県高山市の標高1300m程度の山地。この標高だと中央のモミ属はウラジロモミ。もう少し標高があがるとオオシラビソ、シラビソがあらわれる(8月9日)。

 

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北海道のモミ属であれば全てトドマツ。北海道稚内市にて(8月25日)。

本州の亜高山帯のモミ属であれば、オオシラビソ、シラビソ、ウラジロモが普通で、モミが生育していることはありません。北海道に行けばモミは無く、トドマツのみが生育しています。こんな感じで、その土地に生育している針葉樹を文献や図鑑である程度絞り込めれば、比較的簡単に同定できることもあります。