身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

有名だけどあまり見ない木-346.カシワ-

少し季節外れですが柏餅は皆さんご存じですよね。柏(カシワ)の葉に包まれたあんこの入ったおもちですね。おもちを包んでいるぐらいだからカシワもどこにでもある木と思っていませんか?実はカシワは産地限定の木といってよいと思います(私見です)。

f:id:shimisyoku:20210110154900j:plain

北海道北見市にて(7月20日)。小規模なカシワ群落。以下、特に記載ないものは撮影場所・撮影日同じです。

昨年私がカシワを見たのはオホーツク海に面した北海道北見市です。道路沿いということもあって、あまり立派な樹林ではありませんでしたが、観察しやすい場所ではありました。樹林の立地は海岸に面した斜面ですが、海岸線から少し離れているので、樹林の高さは8m前後に達していました。カシワはコナラやミズナラと同じ仲間なので、樹高8mと聞くと随分低い林だな~と思うかもしれません。でもこれでほぼ成木で、根元の直径も20㎝以上のものもありました。海岸線は風が強いので、そのために樹高が低く抑えられているんですね。もっと厳しい環境だと樹高が4-5mで抑えられているようなところもあります。

f:id:shimisyoku:20210110155114j:plain

カシワの葉は類似種に比べて柔らかい。この柔らかさが餅をつつむのによいのかも。

カシワはブナ科コナラ属の落葉高木(らくようこうぼく:冬に葉を落とす、10m以上に成長する木)で、北海道~九州までの広範囲に分布するようです。海沿いの地域でまとまった樹林を形成することが多いですが、内陸に生育することもあるようです。私は北海道と東北・北陸の日本海側でしかまとまった樹林は見たことが無いため、カシワは東日本の植物かと思っていましたが、四国や九州にも分布があるという改訂新版日本の野生植物(平凡社)を見てびっくりしました。

f:id:shimisyoku:20210110155259j:plain

カシワ餅の葉を採集するためのカシワ植林ってあるのだろうか?

ちなみに私の住む海無し県の岐阜県では、カシワの分布は限られていて、その殆どが植栽起源と考えられています。岐阜県の分布を考慮すれば、多分西日本でも自生の産地は限られていると思います。そうすると柏餅のカシワは東日本で採集されたものが出回っているのでしょうか🤔?今時、材料を山から調達というのはありえませんかね😅。どこかにカシワの植林があるのかもしれません。カシワの葉はそうそう見ることがないと思うので、今度柏餅を食べる時は、まじまじと観察してみて下さい。そういえば息子が小さい時、柏餅を葉ごと食べようとしていたな…懐かしい😄。

カシワの特徴は次の3点です。

f:id:shimisyoku:20210110155559j:plain

①樹皮:樹皮は縦に深いひび割れが生じます。樹皮がコナラに比べると厚いような気もしますが、全体的にはコナラの樹皮と似ています。

f:id:shimisyoku:20210110155631j:plain

②葉の形:葉は枝先に集まりますが、よく見ると互生(ごせい:葉が交互に着く)しています。形は倒卵形(とうらんけい:葉の上方が幅広くなり、卵形を反対にしたような形)で、葉先はとがらず、先端が丸味を帯びた大きな鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があります。コナラやミズナラとは葉の形だけでも違いはわかりますが、カシワの葉は長さが12-32㎝と大きな点でも異なります。葉柄が殆ど無いのも特徴と言えます。

f:id:shimisyoku:20210110155921j:plain

③葉脈と毛:葉脈(側脈)は直線的で、葉の大きさの割には側脈の本数が少ないです。裏面は短毛と星状毛(せいじょうもう:1箇所から3-6本の毛が出る、ヒトデ状(星状)の毛)が密生し、淡緑色から淡褐色。

典型的なカシワの葉を見れば、似ている植物は無いといってよいでしょう。ただ、カシワは落葉性のコナラ属とよく雑種をつくると言われています。私も北海道ではミズナラなのかカシワなのか迷うような個体を海岸沿いで何回か見たことがあります。

f:id:shimisyoku:20210110155858j:plain

数年前ミズナラにしては鋸歯が丸く、大きさも少し大きめだけど、星状毛が少ないといった植物を、今回訪れた北見市で採集しました。多分それは、ミズナラとカシワの雑種のカシワモドキなんではないかと思っています(7月25日撮影)。