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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

乾燥した樹林に多い木-348.ソヨゴ-

ソヨゴはうちの近所の山ではよく見かける木ですが、関東地方で調査していた若い頃は殆ど見ることがなかった木です。

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岡山県美作市にて(3月3日)。以下、産地記載ないものは撮影場所・撮影日同じです。

ソヨゴは乾燥した樹林に生育することが多く、尾根や西向き斜面のアカマツ林や常緑広葉樹林などでよく見かけます。特にうちの近所はチャートの山が多く、尾根に限らず斜面の中腹より上は乾き気味といった感じです。そのためソヨゴは山に行けばどこにでも生育していると言ってもよいです。ソヨゴは通常10m以下のものが多く、樹林内では亜高木層(森の一番上に出る木よりも少し低い階層)を形成することが多い木です。ところがうちの近所ではだいぶ前に松枯れが流行ったせいか、尾根の松林は貧弱なものばかりになってしまいました。高木層のアカマツが枯れた結果、亜高木層の樹木が森の最上層の木となってしまい、場所によってはソヨゴ林といった変な樹林ができあがっているところもあります。

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中央付近のまっすぐ伸びた常緑広葉樹がソヨゴです。これで8mくらいです。

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林床に這ったように群生するソヨゴがありました。これは複数の稚樹からなるのか、それとも匍匐性のソヨゴなのか?ちょっと不思議な感じでした。

ソヨゴはモチノキ科モチノキ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく:冬にも葉がついている、10m以上に成長する木)で、本州(東北地方南部以西)~九州に分布しています。私の記憶ともかぶりますが、神奈川県植物誌2018によると、神奈川県ではまだソヨゴの自生個体は確認できていないようです。関東平野周辺部ではソヨゴは少ないのかもしれません。多分、ソヨゴがごく普通に見られるのは中部地方以西だと思います。

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赤い実がなるのは雌株。実がたわわに実る感じでは無いので、かなり地味。

ソヨゴは赤い実がなるのですが、よく植栽されるクロガネモチなんかに比べると実は目立ちません。それでもあまり大きくならないというサイズ感が手頃なのか、庭木や公園などに植栽されることもあります。実際うちの庭にも植えられています…😅。

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岐阜県岐阜市にて(6月6日)。これは雄株。雄株は花が多いけど、全く目立ちません。

でも、なぜか実がならないと思ったら、ソヨゴは雄株と雌株があるようです。うちのは雄株ということですね…。実がならないとつまらない木なので、植栽を考えている方は雌株を選んで植えた方がよいと思います。

ソヨゴの特徴は次の3点です。

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①全体容姿と樹皮:7-8m程度になる高木で萌芽株となることも多い。樹皮は灰色で遠くから見ると滑らかな樹皮をしています。ただ、近づいて見ると皮目(ひもく:幹や枝にできる空気の出入り口の役割を持つ組織)が多く、皮目が筋状の模様に見えることもあります。ソヨゴの樹皮には地衣類?がつくことが多く、褐色の大きな斑紋や、白っぽい大きな斑紋が出ることが多いです。

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②若枝と葉のつき方:若枝の色彩は淡い紫色で、ごく細かい粉状の毛がありますが、割と早く落ちてしまいます。2年目以降の枝は褐色になり皮目が目立ちます。葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)します。

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③葉の形状と質感:葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)の長さは4-8㎝で、形状は卵形、先端はとがり、基部は円形で葉柄(ようへい:葉の柄の部分)との境が明瞭なのが特徴です。鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)は基本ありませんが、時々上半部に低い細かい鋸歯が出ることがあります。葉の質感は常緑樹にしては薄く柔らかい感じです。両面とも無毛で側脈はうっすらと見え、裏面は淡緑色です。

比較的よく目にする類似種としては、クロガネモチあげられます。クロガネモチの若枝は濃い紫色で無毛、陵が目立つという点で異なります。クロガネモチの葉は基部が広いくさび形になる点でも異なります。