身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

覚えておきたい常緑高木-303.ウバメガシ-

焼き鳥屋に入って「焼き鳥は炭火焼きがいいよね~」「炭は紀州備長炭に限るね~」なんておっしゃっている方々いませんか?ところで備長炭の原料の木の名前分かりますか?

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三重県尾鷲市にて(2月21日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

この木なんですけど、どうでしょう。わかりますか?

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遠くから見ると黒っぽい緑色の小さな葉という印象があります。

正解はウバメガシです。木の名前も知らずに焼き鳥食べていると、○コちゃんに「ボーッと生きてんじゃねーよっ!」と叱られちゃいますよ~。備長炭の産地は紀州が一番かどうかはわかりませんが、紀伊半島はウバメガシが多い地域なので、まあ本当なのかもしれません。

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林内から見上げるとこんな感じ。8mぐらいなので双眼鏡で形もしっかり見える。

ウバメガシはブナ科コナラ属の常緑広葉樹で、樹高は大きいもので10m程度になります。コナラ属の木は樹高15mを超えるような木が多いのですが、ウバメガシはあまり大きくなりません。当然幹もそれほど太くなりません。備長炭の細めの炭はそのサイズで切って炭にしているからですが、自然な状態でもそれほど太くならないというのがよいのかもしれません。幹の肥大成長が遅い分、硬くて良い炭になるのでしょう(多分)。

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ウバメガシ群落。ここでは結構急な岩の多い斜面に成立していた。

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上から眺めるとこんな感じ。光の反射が強いです。

ウバメガシは千葉県以西の本州・四国・九州・琉球に分布し、太平洋側の海沿いに多く分布します。比較的乾燥した斜面に生育し、海岸沿いではウバメガシが圧倒的に優占する、ウバメガシ群落を形成します。ウバメガシの小さな硬い葉は、乾燥し、風が強く、潮の影響を受ける過酷な環境に適応した形だと思われます。ウバメガシ群落を見ると、海沿いの温暖な地域に来たな~、夜は黒潮のおいしい魚料理でも食べたいな~(焼き鳥は思い浮かびません)という気分になります。

ウバメガシの特徴は次の3点です。

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①幹と樹皮:幹は地際から萌芽していることが多く、樹高は10m未満が多いです。樹皮は褐色で浅く縦にひび割れます。

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②枝:1年目は淡褐色の星状毛(せいじょうもう:星型の毛)を密生しますが、2年目の枝は無毛になります。

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③葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)しますが、枝の先端に複数枚がまとまってつくことが多いので、輪生(りんせい:1節から3枚以上の葉が着く)しているように見えます。葉柄は短く、大きさは3-6cmくらいで、楕円形、縁に硬い鋸歯があります。基本的には無毛ですが、若葉は褐色の星状毛があります。

コナラ属の中では硬くて小さな葉をつける点が特異的で、同属の中では似ている植物はありません。ただ、常緑広葉樹を見慣れていない方にとっては、小ぶりの葉をつける木はみんな似ているかもしれませんね。