ベニシダそっくりさん-349.マルバベニシダ-
冬場は紹介する植物が少ないので、夏場に撮影したシダ植物を紹介します。ベニシダにそっくりなマルバベニシダです。
三重県紀北町にて(2月21日)。真冬でも観察できる植物です。
マルバベニシダはベニシダに慣れたら、その次の2番目~4番目に覚えるベニシダ類似種と言ってもよいかもしれません。見かける頻度もベニシダに次いでとは言いませんが、比較的よく見かけると思います。ちょっと乾き気味の樹林に多く、ベニシダよりも小型で細長い印象がありますが、個体差が結構あるので、あくまでも私個人のイメージです。常緑のシダなので、今頃の冬場の観察にも持ってこいですが、包膜の色彩がわかったほうが初心者にはわかりやすいと思うので、確認適季は春から初夏ぐらいですかね。
岐阜県可児市にて(8月2日)。紀北町の写真とともに標準的な形だと思います。
マルバベニシダはオシダ科オシダ属の常緑の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州(新潟~福島県以南)・四国・九州・種子島に分布します。ベニシダよりも少し分布が南方に偏る感じです。暖温帯の常緑広葉樹林やスギ・ヒノキ植林、林縁等に普通に生育します。
三重県鈴鹿市にて(5月11日)。これはだいぶベニシダに似ていると思います。
上の写真の個体の羽片の拡大。小羽片の先端があまり丸くないですが、包膜は白色なのでマルバベニシダだと思う。
名前の由来は羽片の裂片もしくは小羽片の先端が丸味を帯びるからとのことです。確かに一見しただけで「何か丸っこい!」と思う個体もありますが、中にはベニシダと大差ない個体もありますね。また、同じ葉でも部位によっては小羽片の先端が丸くないですね…。形でパッと見分けるにはやはり慣れが必要なので、初心者には包膜の色は重要ですね。
マルバベニシダの特徴は次の4点です。
①生え方と大きさ:葉は株状に複数枚つきます。大きさは葉柄(ようへい:葉の柄の部分)が26-35㎝程度で、葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)は葉柄よりも10㎝以上大きめです。葉は斜めに伸びるので膝丈以下の大きさが普通です。
②葉の形:葉身の形は卵形~三角形に近い卵形、2回羽状深裂~複生に切れ込みます。一番小さな裂片を小羽片(しょううへん)と言いますが、小羽片の先端が丸味を帯びることが多いです(鋭形の時もあります)。一番下の羽片(最下羽片)の基部の下向きの小羽片が小さくなる点がポイントの一つです。
③鱗片:鱗片(りんぺん:茎につく鰹節みたいなもの)は全体に多く、特に基部では多く、色は赤褐色~褐色(ベニシダに比べると明るい色彩)で、狭披針形、全縁(ぜんえん:縁が平滑)です(鱗片は葉の先端側に行くほど形状が細く短くなります)。羽片や小羽片の裏側の軸には基部が丸っこく立体的になる袋状鱗片(ふくろじょうりんぺん:写真参照)が多くつきます。
④胞子のう:胞子のうは小羽片の中肋(中央脈)に接するようにつきます。包膜(ほうまく:胞子のうを覆う薄い膜)は透明(若い時は透明)か白色で、ベニシダのように赤くなりません。
よく見る類似種はベニシダですね。ベニシダとの違いを是非マスターして下さい。