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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

お屠蘇の原料-264.ハマボウフウ-

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします
正月行事の一つにお屠蘇を飲む風習がありますが、皆さんはお屠蘇を飲みましたか?私はお屠蘇のさわやかな味が大好きなのですが、これまでお屠蘇の準備をしたことがなく(ほぼ人任せ)、その原材料については全く知りませんでした。お屠蘇の原材料名を見ると、桂皮(ニッケイ)、山椒(サンショウ)、陳皮(みかん)、桔梗(キキョウ)、大茴香トウシキミ)、丁子(チョウジノキ)、浜防風(ハマボウフウ)と書いてありました。日本に自生しない植物が多いですが、サンショウ、キキョウ、ハマボウフウは日本に自生する植物ですね。それではお正月にちなんだ植物ということで、今年最初に紹介する植物はハマボウフウにしましょう。

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北海道紋別市にて(7月24日)。花の時期のハマボウフウ

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北海道紋別市にて(7月24日)。花は白色で小さく、かなり密集してつく。

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北海道猿払村にて(8月26日)。実の時期のハマボウフウ。カリフラワーみたい。

ハマボウフウはセリ科ハマボウフウ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、日本全国に分布し、海岸の砂浜に生育します。分布域は広いのですが、砂浜の開発や、波浪による砂浜の消失によって、最近は少なくなってきているようです。山菜として葉を食するほか、根は漢方薬としても利用されているようです。ちなみに漢方薬の「防風」はハマボウフウではなく、中国原産のセリ科の植物(Saposhnikovia divaricata)です。

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ハマボウフウが生育する海岸の砂浜。シロヨモギやハマニンニクが混生する。北海道猿払村にて(8月26日)。

ハマボウフウが生育する海岸の砂浜は、植物が生育するには過酷な環境です。どのあたりが過酷かというと、夏の炎天下の砂浜を想像してもらえばわかりますが、とにかく乾燥が厳しいです。砂は水分があるのか・・・と思うほどカラカラになりますよね(海水は当然ダメです)。ハマボウフウはこのような乾燥に適応するため、ごぼうのように地中深くまっすぐ伸びる根を持っていて、長いものでは1mにも達するとか。このような深く伸びる根を持つことによって、蒸発しない地中深くの水分を吸収しているのですね。すごい

ハマボウフウの特徴は次の3点です。
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①生育環境と全体容姿:生育環境は海岸の砂浜。背丈はあまり高くならず膝丈未満のことが多い。他の植物がはえない砂浜前面では、地表にはりつくような感じで生育します。
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②葉:葉は互生し、形状は1-23出複葉(さんしゅつふくよう:葉柄の先が3つに別れ、小葉3枚からなる葉)、厚みがあり表面は光沢がある。縁には細かい鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があり、小葉(しょうよう:1枚の葉が分裂してできた個々の葉のこと)の先端は丸みを帯びる。
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③花序と果実:カリフラワーのような雰囲気の花序をつけます。2個の果実がくっついて1対となり、1対の果実がさらに接して多数つきます。果実は5枚の翼(よく:写真参照)があり、全体に短毛がはえます。


生育環境や全体の容姿、カリフラワーのような果実期の花序を見れば、見間違えるような植物はありません。ハマウドやアシタバも海岸に生育するセリ科の植物ですが、これらは砂浜の前面(海に最も近い砂浜)付近に生育することはありません。