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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

苺が実ったよ!-243.ヘビイチゴ-

今年は梅雨が早いようです。梅雨時から夏にかけては野生の苺の実る時期です。ヘビイチゴもちょうど実りの時期を迎えていました。

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茨城県常総市にて(5月22日)。たくさん実がついていました~。

ヘビイチゴが食べられないことは皆さんご存知ですよね~。食べられないことを理由に、子供の頃には、「毒イチゴ」なんて言われ方もしていましたが、実際には毒はあるのでしょうか?

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茨城県常総市にて(5月22日)。この苺は誰が食べるのだろうか?

ヘビイチゴについて書籍で明瞭に有毒と書かれているものは殆どないようで、実際は無毒に近いようです。外国の書籍では薬としての効能が記されており、近年は薬効成分も明らかになってきています。外国では食べる事例がある一方で、類似種のヤブヘビイチゴを食べて急性中毒になったといった恐ろしい事例もあるようです。薬に使われるということは、少なからず体に影響を与える成分を含んでいるようなので、興味本位で12つ食べる分にはよいけど、大量に食べるのはやめたほうがよさそうですまあ、「非常においしい」と書かれた日本の書籍は1冊もないようなので、食べなくてもよいかな~

ちょっと前に「このイチゴは蛇が食べるんですか?」と聞かれました。「蛇は肉食だからイチゴは食べないでしょ~」とお答えしましたが、食べたりしていたら面白いですね。このネーミングセンスはナイスですね。いろんなことを想像させてくれます。

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岐阜県中津川市にて(5月12日)。日陰だったので少し花付きが悪いですね。

ヘビイチゴは花もきれいです。春の黄色の花と初夏の苺が可愛いので、庭に植えたのですが、10年たって一度も実がなったことがありません。毎年たくさんの花が咲くのに・・・。本を読んだところ、ヘビイチゴヤブヘビイチゴの雑種のアイノコヘビイチゴというのがあるらしいです。雑種なので実はつけないと書いてあります。近所の藪から取ってきたので、雑種だったのかな?

ヘビイチゴバラ科キジムシロ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、日本全国に分布します。水田や河川敷など明るいやや湿った場所に生育します。河川敷のグラウンドは水はけが悪いところがあり、そのような場所でもよく見かけます。似たような種類にヤブヘビイチゴがあります。名前に「藪」とつくから、明るいところに生育しているのがヘビイチゴ、藪にはえているのがヤブヘビイチゴと思う方もいらっしゃいますが、必ずしもそういうわけではないようです。ヘビイチゴも藪や明るい樹林内に生育することもあるので、名前に惑わされないように。

ヘビイチゴの特徴は次の3点です。
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①茎と葉:花の時期には地表を這う走出枝(そうしゅつし:地面を横に這う茎で、先端のみに子苗ができる)を多数伸ばします。葉は3出複葉(さんしゅつふくよう:葉柄の先が3つに別れ、小葉3枚からなる葉)で、小葉は楕円形で先はとがらず、単純な鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)重鋸歯(じゅうきょし)がまじります。重鋸歯は大きな鋸歯の間に小さな鋸歯があるような鋸歯をさします。
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②花:花序は無く、走出枝につく葉と対になるように花をつけます。花は黄色で直径1.5cm前後。萼の形に特徴があり、副萼片(ふくがくへん:写真参照)と呼ばれる部分に鋸歯のある点が他のキジムシロ属の植物と異なるようです。花の形はヤブヘビイチゴも殆ど同じです。
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③実:実は直径1cm程度で赤いイチゴ状、全体に光沢はありません。よく見ると粒の部分にはしわがあり、本体部分(正確には花床(かしょう))は白っぽく毛があります。


類似種のヤブヘビイチゴヘビイチゴとともに以前はヘビイチゴ属とされていて、キジムシロ属とは別な属とされていました。ヘビイチゴは葉の色が黄緑色で、小葉が丸味を帯び重鋸歯が多いのに対し、ヤブヘビイチゴは葉の色が濃い緑色で、小葉が細長く重鋸歯が少ない傾向にあります。ただ、花の時期や葉だけだと両者を区別するのは少し難しいかもしれません。

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ヤブヘビイチゴの実。キラキラしていておいしそう。茨城県筑西市にて(5月24日)。

実ができれば識別は簡単で、ヤブヘビイチゴの身は光沢があってキラキラしています。
ところでヘビイチゴについては下記の書籍が非常に詳しいです(今回も参考にしました)。ヘビイチゴで本1冊が書けるなんて、身近な植物だけど奥が深いんですね~
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