身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

2016の出会いベスト5-170.ムセンスゲ-

2016年も本日が最終日。訪問して下さった皆様、どうもありがとうございました。それでは、待望の2016年の出会い第1位はムセンスゲです!

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北海道猿払村にて(6月14日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

ベスト5のいずれも地味な選択でしたが、第1位の植物は地味選中の地味選となりました(笑)。なんでこれなのかなーと思う方もいらっしゃると思うので、一応選定理由を。一年間植物相手の仕事をしているので、休日も植物ばかり相手にしていると思われがちですが、実はそうでもないんです。むしろ逆で、休日くらいは植物以外のことをしたいなーと思うわけです。そのため、趣味で「何かの植物を見に行く」という機会は年に10回無いと思います。とは言っても、北海道などあまり行けない場所に出かけると、その場所ならではの植物を見たいものです。そうすると、「これを探しに出かけよう!」ということになります。プラントハンターではないですが、目的の植物に出会えると、かなりうれしいものです。ムセンスゲは2年目にしてようやく見つけることができたので、これ以外の選択はないという感じです。偶然の出会いもよいですが、狙ったものとの出会いこそ、プラントハンター冥利につきるという感じでしょうか(笑)。

ムセンスゲはカヤツリグサ科スゲ属の多年草です。北海道(大雪山・知床・猿払原野)の高層湿原(こうそうしつげん:雨水のみで涵養される低温・過湿・貧栄養・強酸性の立地条件下に成立する湿原。高い山や冷涼な地方に分布する。)に生育します。国内では北海道にしか分布しませんが、ヨーロッパ北部や北アメリカ北部など広範囲に生育します。寒冷地でしか生きていけない感じの植物です。

ムセンスゲの特徴は次の4点です(スゲ属の語句解説はこちら)。
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①:全体の色と生え方:かなり白っぽい緑色。まばらに群生します。
②:花茎の大きさ:10-20cm程度で小型です。
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③:雌小穂:雌小穂(ししょうすい)雄小穂(ゆうしょうすい)と接するように上部に2-3個、直立してつきます。
④:雌鱗片と果苞:雌鱗片(めすりんぺん)は中央が緑色でその脇が褐色になります。果苞(かほう)は顕微鏡で見ると細かい点が多数あり、白緑色、柱頭(ちゅうとう)3分岐です。雌小穂のつき方や雌鱗片の色彩から、アゼスゲの仲間に見えますが、柱頭が3分岐のところが違います(アゼスゲ類は2分岐)。


なかなか写真はうまくとれませんでしたが、いいものを見つけることができました。日本のスゲ増補改訂版(勝山輝男.2015を見ていたら、ホソスゲというさらなる珍品に目がとまりました。ホソスゲは猿払原野で採集されたスゲで、1954年に採集されたあとは消息不明とのことです。次に猿払原野を訪れる機会があったら、この珍品を探して世紀の大発見をしたいですね(笑)。