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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

庭の雑草-136.ノゲヌカスゲ-

「ノゲヌカスゲが庭の雑草なの?」と問われると、一般的には違うかもしれません。というか、ノゲヌカスゲ自体があまりよく知られた植物ではないので、この質問が来ることもないのかもしれません。

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岐阜県関市にて(4月23日)。自宅庭で撮影なので、本来の自生品ではありません。

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穂を拡大するとこんな感じ。この穂の形を覚えておくとよいと思います。

私は仕事柄、各地の雑草の種子を引き連れてきてしまうことがあります(服や靴にくっついたり、標本袋内のゴミとして)。時には、「この草どんな花が咲くのだろう?」と確認するため、庭の片隅や植木鉢に植えることもあります。うちのノゲヌカスゲがどのような経緯でやってきたのか、今となってはよく覚えていないのですが、意図的もしくは非意図的に庭にやってきたものと思われます。自然に出現したとは思えません。
ノゲヌカスゲはカヤツリグサ科スゲ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州(福島以西)・四国・九州の草地や林縁に生育します。スゲ属(解説はこちら)は多数の種類がありますが、その中でも小穂(しょうすい)が複数あり、雄と雌で小穂がわかれるタイプのスゲ(詳細はこちら)です。さらに、ノゲヌカスゲのようなタイプのスゲはアオスゲの仲間と呼ばれることが多く、分類がちょっと前までは難しいグループでした。最近は、比較的お手ごろな、スゲ類のよい図鑑(「日本のスゲ増補改訂版」(勝山輝男,文一総合出版)等)も出ていますので、そのような書籍も参考にしていただければと思います。

ノゲヌカスゲの特徴は次の4点です。
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①草丈と生え方:草丈は30cm以下で、地下茎は無く大きな株になります。
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②地面際の鞘の色:地面際の鞘の色は濃い褐色で、褐色部分は地上から5cm程度まで色づきます。類似種のアオスゲと並べると違いが顕著ですが、単独で見てこの違いに気づくには、少し慣れが必要かもしれません。
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③雄小穂:雄小穂は線形で細く、雌小穂と接して付くので、目立ちません。
④雌鱗片と果胞:雌鱗片には短い芒(のぎ:針状に伸びた突起)があります。果胞はルーペで見ると殆ど無毛。顕微鏡で見ると、ごく短い毛がわずかにあります。

似た植物にはアオスゲの仲間全部があげられますが、特に似ているのはヌカスゲとメアオスゲでしょうか。ヌカスゲは雌鱗片に芒が無い点で異なります。メアオスゲは地面際の鞘の色が濃褐色ではない点、地面際に雌小穂が付く点で異なります。話が前後しますが、アオスゲの特徴については、この後の記事を参照してください。