2015年一番印象に残った植物-100.シテンクモキリ-
2015年もあと少しで終わりです。今年も初めて出会った植物がいくつもありました。そんな中で、一番印象に残った植物を紹介したいと思います。シテンクモキリソウです。
北海道稚内市にて(7月15日)。以下、撮影場所・撮影日同じです。
花も地味で、植物体も15-20cm程度で、目立つ植物ではありません。なぜ、これが今年一番かと言うと、実はここ数年、見つけてみたいな~と思っていた植物だからです。
シテンクモキリは2008年に堤千絵氏・遊川知久氏・加藤雅啓氏らによって「Acta Phytotaxonomica etgeobotanica」(日本植物分類学会の欧文誌)に新種として発表された植物です。この発表の前だったか、後だったかは、記憶が曖昧なのですが、遊川知久氏が岐阜県に公演に来てくださり、このシテンクモキリの話をして下さいました。その際に、ブナ帯(ブナ林が成立する気候帯)よりも標高の高いところで似た植物があったら、注意して見てみて下さいと言っていました。そんな新種が自分でも見つけられるかもと思ったら、すごくワクワクしました。この公演を聞いてからは、注意して見てきましたが、なかなかこの新種には出会えませんでした。新種を探すのは厳しいかな~と思っていたので、出会えた時は本当にうれしかったですね。ヨッシャーといった感じですね。
シテンクモキリの特徴は次の3点です。この仲間(クモキリソウ属)は、葉だけでは同定が難しく、花が識別のポイントになります。
①生育場所:地上に生育します。似た植物の中には樹上に生育するものもあり、生えている場所が種を同定する際のヒントになります。
②葉:葉は同じ大きさのものが2枚、地際から出ます。葉は鮮やかな黄緑色で光沢がある感じです。縦の葉脈はわりとはっきりしていますが、横の脈はあまり見えません。
③花:この仲間の花は皆、虫のような形をしています。一番目立つ花びらはベロのような形をしていて、緑色、中央に紫色の点があります。この紫色の点が“シテン(紫点)”の由来です。ひげのような花びらは、少し紫色を帯びます。
この仲間で最も普通に見られる種はクモキリソウです。クモキリソウの花は全て緑色なので、花が咲けば区別は簡単です。
記載論文は下記のとおりです。
ChieTsutsumi,Tomohisa Yukawa,Masahiro Kato. 2008. Liparis urpureovittata(Orchidaceae)-aNew Species from Japan. Acta Phytotax.Geobot.59(1):73-77