身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

北海道黒松内低地の北限ブナ林

北海道らしい森林というと、エゾマツ、トドマツが優占する常緑針葉樹林と、これらの針葉樹とミズナラ等が混生する針広混交林だと思います。こんな森林を見ると、「あー北海道来たな~」と感じます。ところが、北海道でも「本州らしさ」を感じられる地域があるようなのです(わざわざ北海道に来て、本州らしさを感じなくてもよいか・・・)。それが、黒松内低地以南の道南地方です。特に黒松内低地周辺にはブナ林があり、北限のブナ林として植生学を勉強した人達の中では超有名な場所です。

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北海道今金町カニカン岳ふもとのブナ林。本州っぽい景観です。

今回はそんなブナ林のうち、歌才植物群落保護林(黒松内町)を訪れました。樹林内は登山道が整備されており、往復1時間くらいでブナ林を観察することができます。
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入り口の様子。

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分布域の端だから、しょぼいブナ林なのかなと思っていましたが、非常に立派なブナ林でした。太さも90cm程度ものもあり、樹高は20mを超えそうです。ブナ林の分布の中心とも言える東北地方のブナ林と比較しても、立派さではひけをとりません。驚きました。
高木は殆どがブナで、ミズナラシナノキがまじります。北海道の象徴ともいえるトドマツ、エゾマツといった針葉樹は混生しません。草本層はクマイザサが密生します。宗谷丘陵では目にすることのなかった、ハウチワカエデ、ミネカエデ、ヒメモチ、アクシバ等の木本類、シシガシラ、ヤマソテツ、ツクバネソウ、スミレサイシン、ユキザサ、ナガバハエドクソウ等の草本類がはえ、北海道よりも東北地方に近い雰囲気です。

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トリアシショウマ。大きな白い花序が特徴です。

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ナガバハエドクソウ。小さな花を穂状につけますが、目立ちません。

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ヤブハギ。これも小さな花を穂状につけます。ヌスビトハギの仲間ですが、華奢です。

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シラネアオイ。花は春に咲くので今は果実です。果実が面白い形をしています。

歩いていると、かなり暑さと湿気を感じます。気候的にも東北地方です(せっかく涼しいところにきたのに)・・・。

しかし、これほど立派なブナ林が成立するのだから、黒松内低地帯よりも北側にブナ林のしょぼいものがあってもよさそうですが、黒松内低地帯でスパッとブナ林がなくなるようです。植生学の教科書でも、これより北部には気候的にブナ林が成立しないということになっています。

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黒松内町ブナセンターの展示資料より

黒松内低地帯では圧倒的に優占するブナですが、ちょっとした気候の差で北進できないというのも不思議なものだな~と感じました。