身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

ブナ林七変化!?-飯豊山塊にて-

東北地方はまとまったブナ林が分布することで有名です。福島・山形・新潟にまたがる飯豊山塊も、その例にもれず、広大なブナ林が広がっています。飯豊山塊では標高400m1600m程度の範囲にまとまったブナ林が出現します。

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モコモコした森林がブナ自然林。このような森林が広い面積を占める。福島県喜多方市にて(9月29日)。

今年はブナ林に多く訪れていますが、今回は、「えっ?これもブナ林?」というような少し変わったブナ林を見ることができたので紹介したいと思います。今回は福島県側の弥平四郎という集落付近から、標高1654mの疣岩山(いぼいわやま)、標高1578mの巻岩山を日帰りで登ってきました。低標高の山なので、一山ブナ林といってもよいぐらいです。

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ブナ巨木がはえる自然林。ブナ自然林といえば、このような森林が一般的に想像されると思います。福島県西会津町にて(9月29日)。

登山道を登ればすぐに、自然林と呼ぶのにふさわしい、巨木の森が出現します。このような森は、今年各地で見ているので、それほど驚きはありません。でも、こんな森をみると、神様や何かが住んでいそうと思います。

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巨木は少なく、やや細い木が多いブナ林。傾斜が急なので大昔に崩れたのか?成り立ちはよくわかりませんが、明瞭な伐採の痕跡はなく、これも自然林なのかも。福島県西会津町にて(9月29日)。

さらに登ると、やや細い木が多くなるブナ林が出てきました。雰囲気的には二次林のようにも見えます。ただ、ブナ巨木の森よりも標高が高く、標高の低い森の木を切らずに、標高の高い森の木を切るというのも解せないので、これも自然林なのかもしれません。

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樹高は3-4m。見た目はただの藪ですが、最上層で優占するのはまぎれもなくブナ。ということは、これもブナ林。神々しさは全くないです(笑)。福島県喜多方市にて(9月29日)。

さらに登って、山の稜線に出ました。標高は1300m以上です。風雪の影響が強いため、稜線上は低木林になっています。見た目には、ブナ林とは異なる樹林ですが、優占種はブナです。ブナは3-4m程度で、生育している種もブナ林でよくみかける種が多いです。こんな形状のブナ自然林があるのには、本当に驚きでした。

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ブナ低木林とブナ高木林を遠目に見るとこんな感じ。見た目全く違う樹林ですが、ブナが優占するという点では赤と黄色の樹林は同じブナ林。雪崩が頻繁におこる斜面や、極端に急な斜面ではさすがにブナも生育できません。そのような水色のエリアの低木林はヒメヤシャブシ、ヤマモミジ等が多い、異なる群落となっていました。福島県喜多方市にて(9月29日)。
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白い幹と黄色の紅葉(黒矢印)はダケカンバ。幹が目立たずオレンジ色の紅葉(水色矢印)はブナ。ダケカンバが多いが、ブナもそれなりにまじる。ブナ林とするか、ダケカンバ林とするか、迷うところ。新潟県阿賀町にて(9月29日)。

さらに登って1600m近くになりました。風雪の影響が弱いところでは、亜高山帯の樹林を形成するダケカンバが目立ってきます。ところがよく見るとダケカンバだけでなく、ブナも混生しています。ブナ・ダケカンバ林という感じです。私が住む岐阜県では、亜高山帯には、コメツガ、シラビソ、オオシラビソといった針葉樹の樹林が形成されるため、ダケカンバはこれらの針葉樹と混生するイメージが強いです。飯豊山塊ではこのような亜高山帯の針葉樹林が欠如しているため、ブナとダケカンバがいきなり混生してしまうようです。ブナとダケカンバのコラボは、私にとっては斬新で、非常に面白かったです。

今回の登山では、天候の急変もあり、写真は撮影できなかったのですが、ブナと高山帯を代表するハイマツとの混生も疣岩山で確認できました。この組み合わせは常識では考えられないので、異次元的な組み合わせ(笑)といった印象を受けました。


ブナ自然林と言えば、樹高20m以上の巨木が乱立するものといった固定観念を持っていましたが、今回の飯豊山塊の登山でそれは覆されました。ブナは様々な環境に適応して、その場にあった形状、その場に適した植物と共存して優占する群落を形成していたのですね。まさにブナ林の七変化です!