おめでたい植物-283.キンミズヒキ-
ミズヒキよりもさらにおめでたいのがキンミズヒキです。ご祝儀をはずむ時に使う金色の水引をイメージしているようです。
愛知県長久手市にて(9月6日)。水引という感じではないですね…。
神奈川県南足柄市にて(8月27日)。花序だけ拡大して見ると結構きれい。
ミズヒキは針金のような花序にごく小さな花をつけていたので水引に似ていましたが、キンミズヒキは花序が太く花も大きいので、正直、水引には似ていない感じですね。どちらかというとオカトラノオのように花序が太くなるので、キントラノオなんて名前の方がしっくりするかも。
個々の花の大きさは1cmぐらいで、黄色ということもあって目立ちそうな感じですが、夏の強烈な日差しの下では黄色の花は殆ど目立ちません。照り返しの日差しと周囲の緑に溶け込んでしまいます。どうやったらうまく写真が撮れるものか…といつも悩まされます。
キンミズヒキはバラ科ミズヒキ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州に分布します。林縁や明るい樹林内、草地等にごく普通に生育しています。秋になるといわゆる「くっつきむし」の種子をつけます。広範囲に生育できたのは、このくっつきむしのおかげでしょうか?
若い果実。この先端部分で服にくっつく。私も結構つれてきました…(いわき市にて)。
① 茎:茎は直立し、膝丈~腰丈ぐらいになります。茎には毛がありますが、その量は様々です。
② 葉:奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)の葉を互生します。小葉(しょうよう)は楕円形で先は尖り気味、大きな鋸歯があります。小葉は大きなものが5~9個つき、その間にごく小さな葉のようなものが多数つくのが特徴です。葉全体に毛があり、葉の裏面には淡い黄色の腺点(せんてん:油の粒のような点)があります。托葉(たくよう:葉の付け根付近にある葉のようなもの)も特徴的で、鳥が翼を広げたような大きなものが茎を囲むようにつきます。
③ 花序と花:花序は細長く、直径8-10mm程度の黄色の花を多数つけます。花弁の形は楕円形から倒卵形(とうらんけい:卵形を反対にしたような形)で、雄蕊は8~14本です。
キンミズヒキはほぼ全国に分布し、生育環境も開けたところから林内までと広いため、個体変異の幅が大きく、これ全部一緒の種類なんだ…と思う時もあります。特に個体の大きさ、毛の量、托葉の形なんかに変化が多いです。そのため最近はオオキンミズヒキ、ダルマキンミズヒキといった変種に区別される時もありますが、私はまだ把握しかねています。まだまだ勉強しないといけませんね。よく見る類似種としてはヒメキンミズヒキがあります。その名の通りキンミズヒキよりも小型で、花弁の形が細長い楕円形、雄蕊が5~8本と少なめな点が異なります。キンミズヒキも環境によっては小さくても花を咲かせるので、大きさでは両者は分けられません。珍しい所ではチョウセンキンミズヒキというのがあり、こちらは花が大きく、雄蕊が12~30本と多いのが特徴のようです。まだ見たことがないので見てみたい植物の一つです。