実が目立つ木-296.イズセンリョウ-
12月中旬に今年最後の現場に出かけてきました。この時期になると被写体となる植物も少なくなってきますが、常緑広葉樹林域はまだまだ植物観察ができますね~。今年最後の被写体(多分)となったのはイズセンリョウです。
三重県尾鷲市にて(12月11日)。以下、イズセンリョウは撮影日・撮影場所同じです。
この時期はたくさん実がついています。白い色ですが熟しているようです。
名前に「センリョウ」とつきますが、正月に飾られたりするセンリョウとは全く異なる植物です。センリョウは赤や橙色の実がつきますが、イズセンリョウは白い実がつく点で大きく異なり、両者が似ている点は常緑低木で丸い実が生るということぐらいでしょうか。しかし白い実というのは、人間的には熟していないように見え、あまり美味しそうな感じがしません。現在まで生き延びたわけですから、これでも食べてくれる動物がいるんでしょうね。
こちらはお馴染みのセンリョウ。見た目に違いますね。三重県熊野市(12月12日)。
「イズ」=静岡県伊豆地方、と想像してしまいますが、分布は伊豆地方だけでなく本州(関東南部以西)、四国、九州、琉球と暖かい地方であればごく普通に見られる植物です。最初に標本を採集されたのが伊豆地方だったからこのような名前になったのですかね~。
つぼみがたくさんついていました。花は4-6月に咲きます。
イズセンリョウはサクラソウ科(旧分類体系ではヤブコウジ科)イズセンリョウ属の常緑低木(じょうりょくていぼく:冬にも葉がついている、4m程度以下の木本)で、常緑広葉樹林内の林床に生育しています。
イズセンリョウの特徴は次の3点です。
①容姿:高さが1m程度にしかならない常緑低木で、根元からたくさんの枝を出し、枝は弓なりに伸びる感じです。谷地形のような水分条件の良い環境だと群生することも多いです。
②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)し、形状は楕円形~狭楕円形で先端も葉柄側も尖り気味です。裏面はやや白っぽく、葉脈は明瞭で、先が細かい鋸歯につながります。鋸歯は非常に細かく数は少ないです。常緑樹ですがそれほど強い光沢は無く、質感は薄めです。
③実:果実は10個程度が集まってつき、直径5mm程度の球体で、白色(よく見ると褐色の筋がある)、先端に突起があります。
非常にそっくりな植物としてはシマイズセンリョウというのがありますが、これは九州南部と琉球のみに分布するので、その土地に住んでいる方以外はそうそう目にしなそうです。一般的な常緑低木で白い実をつける植物はイズセンリョウしかないので、実がついていれば間違える植物はありません。葉だけだと、慣れるまではいろんな常緑樹と区別するのが難しいかもしれません。個人的にはアラカシの幼木と間違えやすいような気がします。ちなみにセンリョウの葉は対生なので、実がなくてもセンリョウと間違えることはないと思います。