身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

簡単そうで奥が深いシダ-306.ベニシダ-

まだ春の植物が撮影できていないので、その合間にシダ植物を紹介したいと思います。シダ植物はあまり得意では無いので、あくまで個人的な感覚です。今回紹介するのはベニシダです。

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三重県紀北町にて(2月21日)。典型的な形の個体だと思います。

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三重県鈴鹿市にて(5月10日)。スギ・ヒノキ植林内ではごく普通に見かけます。

ベニシダは私が植物調査に携わるようになって最初の方に覚えたシダです。関東以西ではごく普通に見られるシダなので、覚えておかなければ調査にならず、覚えなければならないシダの一つでした。最初の頃は関東地方で調査していたことに加え、シダに関する知識が殆ど無いので、ベニシダは割と簡単に覚えられたような気になりました(実際は間違った同定も混ざっていると思う…)。ところが図鑑をよく見るようになると、写真ではベニシダと同じように見えるものが、全く別種として掲載されていたりします(わかる人が見れば違いが見える…?)。図鑑の知識が頭に入れるにつれて、ベニシダをただのベニシダかどうか疑うようになってきます。植物調査を始めて20年以上が経過した今でも、初めての地域に行って、頭の中で出来上がったベニシダ像と少しでも違うと、「お前は本当にベニシダでよいのか?」と不安に思うことがたまにあります。ベニシダの仲間は見れば見るほど悩むようになる、奥の深~いシダだと思います。

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三重県紀北町にて(2月21日)。冬場でも観察できるのがよいところ。

ベニシダはオシダ科オシダ属の常緑の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州・四国・九州・琉球に分布しますが、東北地方北部や東北南部~中部地方の冷涼な地域には少ない感じです。暖温帯の常緑樹林内や林縁にごく普通に生育し、庭に植えたりもするようです(うちの庭には勝手に?生えてきました)。

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三重県鈴鹿市にて(5月10日)。若葉はこのように赤味を帯びる。

ベニシダの和名の由来は葉が若い時に鮮やかな紅色を帯びるからだそうです。私的には若葉の色合いは鮮やかというよりは渋い赤色といった感じで、胞子のうを覆う若い包膜の方が鮮やかな印象を受けます。

ベニシダの特徴は次の4点です。

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①生え方と大きさ:葉は株状に複数枚つきます。大きさは葉柄(ようへい:葉の柄の部分)が25~40cm程度で、葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)は葉柄よりも10cm程度大きく、葉は斜めに伸びるので膝丈以下の大きさが普通です。

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②葉の形:葉身の形は楕円形~卵型、三角形に近い卵型、2回羽状深裂~3回羽状浅裂に切れ込みます。一番小さな裂片を小羽片(しょううへん)と言いますが、小羽片は浅裂するか、鋸歯縁となります。一番下の羽片(最下羽片)の下向きの小羽片小さくなる点がポイントだと思います。

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③鱗片:鱗片(りんぺん:茎につく鰹節みたいなもの)は全体に多く、特に基部では多く、色は褐色から黒褐色で、線状披針形、全縁(ぜんえん:縁が平滑)です(鱗片の色は葉の先端側に行くほど色は淡くなり、形状は細く短くなります)。羽片小羽片の軸の裏側に基部が丸っこく立体的になる袋状鱗片(ふくろじょうりんぺん:写真参照)が多くつきます。

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④胞子のう:胞子のう小羽片中肋(中央脈)近くにつきます。包膜(ほうまく:胞子のうを覆う薄い膜)は中央付近が鮮やかな赤色になります。

ベニシダの仲間は似たものが多いです…。特に初心者にはどれも同じに見えてしまうことでしょう。比較的よく見る類似種としてはマルバベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダがあげられます。

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類似種のマルバベニシダ。これは包膜が赤色にならない。三重県紀北町(2月21日)。

これらは包膜の色が基本的には灰白色なので、若い胞子のうがつく6~7月頃であれば、比較的簡単に区別がつくと思います。ただ、秋~冬にかけては胞子が飛びちった後で、包膜が落ちてしまったり、ついていても褐色になってしまって色がわからないことが多いです。ベニシダの仲間は常緑なので、冬場の植物の無い時は観察しやすいのですが、包膜の色がわからなくなってしまう点がやっかいですね。