身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

湿地の代表種-292.ヨシ-

湿地を代表する植物と言ったら、ヨシですね。秋になると一面のヨシ原にススキやオギとは少し異なった穂をつけます。

 

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東京都足立区にて(11月2日)。下の写真も同じ撮影場所・撮影日です。

 

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背が高く群生する点ではススキやオギと似ていますが、穂は全然違います。

ヨシはイネ科ヨシ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、世界中の亜寒帯~暖温帯までの広範囲に分布し、当然、日本全国の湿地に分布します。日本の浅い水たまりや湿った裸地は、放っておけばたいていヨシ群落になってしまうといってもよいほど、繁殖力旺盛な植物です(さらに遷移が進むと樹林になることもあります)。

 

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茨城県稲敷市霞ケ浦妙岐の鼻のヨシ原(10月1日)。この年は枯れが早かった感じ。

渡良瀬遊水地釧路湿原など、全国的にも有名な広大なヨシ原を見ると「自然はすごいな~」と圧倒されます。こんな広大なヨシ原の真ん中に方位磁石やGPSを持たずに降ろされたら、脱出はかなり大変だと思います。

 

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釧路湿原展望台から見た釧路湿原(6月26日)。淡い褐色は殆どヨシ原。

湿地にひろがる広大なヨシ原は水鳥やオオヨシキリ等のヨシ原で繁殖する鳥たちの重要な生息の場となっていて、有名な湿地はラムサール条約登録地になってもいますね。ヨシは人間にとっても馴染み深い植物で、夏の日差しを遮る簾にも利用されています(現在も日本産のヨシで製造しているのか?)。ちょっと前からは水質浄化機能についても効果があるとされていましたが、賛否両論のようで、正直どうなのかはわかりません(不勉強なもので)。

 

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東京都足立区荒川河口のヨシ原(10月2日)。河口や湖畔のヨシ原は種の多様性が低いことが多い。

ヨシ原が人様にどれだけ役に立つか未知数ですが、生態学的に有用な環境であることは明らかなようです。ただ、同じ植物から見るとそう単純でもないように感じます。広大なヨシ原に入ると、たいていヨシしか生えていないことが多いです。水位が膝丈程度まで達するならそれもわかりますが、それほど水位が高くなくても殆どヨシだけということはよくあります。これが元からそういうものなのかは継続して見ているわけではないのでちょっとわかりませんが…。

 

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北海道猿払村の湿原(8月26日)。この程度のヨシの量だとたくさんの種類が生育している。

ただ、放棄水田なんかを例にとると、最初は小型の湿生植物が多くはえていて種の多様性が高い状態でも、数年後にヨシが密生すると種の多様性が著しく低下するということがよくあります。水位が高くてヨシしか生育できない場所は当然あると思いますが、ヨシ原の種の多様性の低さは、ヨシの繁茂とも関係しているように感じます。

ヨシの特徴は次の3点です。

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①地上茎と地下茎:地上茎(茎)は直立し、4m程度にまで達します。茎は無毛で節の部分にも毛がありません。地下茎は基本的には地中を横に伸びますが、時々地表付近を伸びる時もあります。

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②葉:葉の形は披針形(ひしんけい:かなり細長い卵型)で、ススキオギと異なり基部側の幅が広くなります。葉の中央に白い目立つ脈が無い点もススキやオギと異なります。

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③花:花にはススキやオギのように毛がありますが、ススキやオギほど目立ちません。イネ科の穂は鱗のような小さな葉が重ね合わさってできていて、まとめて小穂(しょうすい)と呼びます。ヨシの小穂は1-2cm程度と大きく、第一苞頴(だいいちほうえい)護頴(ごえい)の長さの比に着目して下さい(写真参照)。第一苞頴護頴の1/3くらいの長さになるところがポイントです。

似た植物としてはツルヨシとセイタカヨシがあります。ツルヨシはヨシよりも小型で、砂礫地の河原などに生育し、第一苞頴護頴の1/2程度の長さになる点が異なります。セイタカヨシはヨシよりも大型で、ヨシよりかは水はけのよい立地に生育する傾向にあり、小穂が1cm程度と小さい点が異なります(第一苞頴護頴の比率はヨシと同じ)。