身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

長島ダム(静岡県川根本町)

長島ダムは大井川の上流に建設されたダムで、ダム湖は接阻湖(せっそこ)と呼ばれています。
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大井川といえば、大井川沿いに走る大井川鉄道が有名ですね。

ローカルな列車やSL機関車トーマスが走り、鉄道ファンなら知らない人はいないでしょうネ(ちなみに私は鉄チャンではありませんので、知識はこの程度です)。

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接阻峡温泉駅で始発を待つレトロな列車。外国みたい!


そんな大井川鉄道の駅で是非立ち寄ってほしいのが、奥大井湖上駅


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この駅はダム湖に突き出た半島状の尾根の先端にあります。そのためダム湖を横断する長い鉄橋の中間付近にポツンと設置されています。当然まわりにはあるのは、鉄橋と湖と山だけです。鉄橋は人が歩くこともでき、周囲の山もちょっとした散策路が整備されています。長島ダム周辺の自然を観察すにはもってこいの場所だと思います。

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奥大井湖上駅から歩いて渡れる鉄橋。

鉄橋を歩いていると、この地域の森林が非常に混沌としていることがよくわかります。森林を大雑把にとらえると、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、針葉樹林という具合に分けられるのですが、この地域の森林はなんとなくこれらがゴチャマゼのような感じになっています。樹林の構成種はコナラ、イヌシデ、アカシデといった落葉広葉樹が多いのですが、圧倒的に優占している種類は少ない感じです。

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少しわかりづらいですが、いろんな樹種で森林が形成されています。

さらに部分的にはアカマツやモミ、ツガといった針葉樹がまじっていたり、アラカシ、ウラジロガシ、ツクバネガシといった常緑広葉樹がまじっていたりします。このような混沌とした森林ができあがる要因としては、地形の急峻さや、気温が関係しているようです。
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尾根のアカマツ群落。尾根はアカマツ、モミ、ツガといった針葉樹が多くなる。

急峻な斜面では時々地表の崩壊がおきたり、部分的に露岩地があったりして、尾根や谷といった大きな地形の違い以外に微妙な地形の違いが表れやすくなります。そのような地形の不均一さが多分、多くの樹木を生育させる原因の一つになっているのでしょう。

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急傾斜地に成立したモミ群落。こんな斜面は降りれないです・・・。

気温については推測ですが、ダム湖の周囲(遊歩道や道路沿い)の標高は約400600mです。静岡県のような太平洋側の地域では、この標高だと常緑広葉樹林が成立するかしないかという微妙な標高です。もっと複雑にさせるのが冬場の気温で、私は冬場にこの地域を訪れたことはありませんが、この地域は内陸に位置しているので、冬場は結構寒いと思われます。私の住む岐阜でも太平洋側の内陸に位置する東濃地域(半分青いの舞台ですね)は標高が低く、雪も少ないけど、冬場はかなり冷え込むことで知られています。このような太平洋側の低標高域で冬場に寒い地域では「中間温帯林」と呼ばれる耳慣れない樹林が成立すると言われています。

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中間温帯林を代表する森林がモミ・ツガ林。針葉樹だけでなく落葉樹も結構まじる。

簡単に言えば、夏が暑すぎてブナやミズナラの落葉広葉樹林が成立せず、冬が寒すぎてシイやカシの常緑広葉樹林が成立しないという、ちょっとしたメジャーな樹種の空白地域といった感じです。そのようなメジャー級の樹種が生育しづらいため、多くの樹種が優占し、特にモミやツガといった針葉樹が比較的目に付く樹林ができるようです。一見すると混沌とした森林が実は「中間温帯林」という名称を持っているのが驚きですよね~。

今回出会った植物を紹介します。

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ダイコンソウ。林道沿いで比較的普通に見られます。

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ツルニガクサ。あまり目立たない花をつけます。やや明るい林道沿いでは群生しています。

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イワタバコ。湿った岩場や石垣に群生します。ちょうど花盛りでした。

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ハナイカダ。葉の上に実がなる変わった低木。たくさん乗船していました。

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ムギラン。運がよければ樹上にくっついている小型のランが見られるかもしれません。


あと、この地域はヤマビルが多いです。散策路をスタスタ歩くぶんには問題ないと思いますが、立ち止まって写真を撮っていたりするとヤマビルが上ってくる場合があります。立ち止まった際は足元をチェックすることをお勧めします。今回は私も1箇所軽く吸われました

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