身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

覚えておきたい常緑高木-345.アラカシ-

どんぐりのなる木というと私は関東育ちのせいか、コナラミズナラといった落葉広葉樹を思い浮かべます。一方で関東以西の暖地に多い常緑広葉樹のカシの木の仲間もどんぐりがなります。やっぱり、四国・九州の人達はどんぐりの木といったらカシの仲間を思い浮かべるのでしょうか?そんなカシの木の仲間で最も普通なのはアラカシだと思います。

f:id:shimisyoku:20210110062747j:plain

静岡県浜松市にて(10月14日)。産地同じものは撮影日同じです。

f:id:shimisyoku:20210110062846j:plain

去年はナラ類のドングリが不作と聞きましたが、カシ類はどうなんだろう(浜松市)。

私が今住んでいる岐阜県南部では、低山はほぼ全て二次林(にじりん:自然および人為によって樹林が破壊され、その後再生した樹林)で、コナラとアラカシが半々といった混交林や、アラカシ等のカシ類とツブラジイが混生する常緑広葉樹林も多く見られ、そのような山だとアラカシは低木や稚樹も多く確認できます。

f:id:shimisyoku:20210110063147j:plain

岐阜県七宗町にて(6月17日)。岩場の上の樹林がアラカシ群落。

さらにアラカシは乾燥に強いタフな木で、土壌の浅い急斜面や岩場なんかにも生育します。アラカシは二次林や不安定な立地に多いということもあって、私は大木に出会ったことが殆ど無く、直径20-30㎝程度の萌芽した株のイメージが強いです。あと庭木として植えられることも多いようです(我が家にもあります)。

f:id:shimisyoku:20210110063527j:plain

アラカシの葉の表面は光沢があり、天気がいいとまぶしいくらいです(七宗町)。

アラカシはブナ科コナラ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく:冬にも葉がついている、10m以上に成長する木)で、本州の太平洋側では宮城県以西、日本海側では石川県以西に生育し、四国、九州に分布します。常緑広葉樹二次林の代表種と行っても過言ではありません。

f:id:shimisyoku:20210110063701j:plain

ちょっと細身のアラカシ。細身の葉形だと他のカシと最初は迷いますね(七宗町)。

カシの仲間は慣れるまでは同定が難しいかもしれません。まずアラカシ自体の葉の形状の変異が大きく、高木と低木では葉の雰囲気が異なることもよくあります。さらに同定を難しくするのが、アラカシと同所的に生育するカシ類が複数あることです。一番普通に混生するのはウラジロガシで、地域によってはシラカシ、ツクバネガシなんかも混じってきます。高木でこれらの複数のカシ類が混生していると、植生調査の時なんかは本当に迷います。今でこそだいぶ慣れましたが、本当に最初の頃は首が痛くなるほど双眼鏡で葉を覗いたものです。アラカシはカシ類の中では一番覚えやすい種なので、アラカシの特徴だけはしっかりと覚えておくとよいと思います。

アラカシの特徴は次の3点です。

①樹皮:黒っぽい灰色で遠目には滑らかな樹皮をしていますが、近づくと浅い割れ目や皮目(ひもく:幹や枝にできる空気の出入り口の役割を持つ組織)といったボツボツによる凹凸があります。

f:id:shimisyoku:20210110064017j:plain

②葉:葉は互生します。2cm前後の明瞭な葉柄(ようへい:葉の柄の部分)があり、葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)は倒卵形~楕円形で先端はとがり、基部はくさび形~広いくさび形となります。鋸歯は鋭くとがり、双眼鏡でもわりと明瞭に見えます。葉の幅の広いものは常緑のコナラといった雰囲気になります。葉脈は裏面の突出して太く明瞭で、葉裏には伏した淡褐色の毛を密生しますが、葉が古くなると殆ど無毛になります。葉裏に毛が多い時は裏面が淡い緑色ですが、葉裏に毛のない古い葉は裏面が白っぽくなります。

f:id:shimisyoku:20210110064127j:plain

③落ち葉:高木で葉が取れない時は落ち葉が同定のヒントになる時があります。落ち葉は裏面が白くなる時もありますが、あまり白くないものも混じります。落ち葉が白いとウラジロガシと思ってしまいそうですが、そんな時は葉の形にも注意してみて下さい。

一番似ているカシ類はウラジロガシです。ウラジロガシは葉身がアラカシより細く、葉の縁が波打ち、鋸歯が低くて目立たないといった点が異なります。もちろん葉の裏が真っ白になる点もウラジロガシの特徴ですが、アラカシも古い葉は白っぽくなる時もあるので注意が必要です。