大沼・メグマ沼-(北海道稚内市)-
大沼とメグマ沼は稚内空港のすぐ近くにある小さな沼です。これらの沼の周囲には良好な湿地が残されているという情報があったので、ちょっと覗きに行ってみました。
観察小屋の前からみた大沼。この部分は湖畔と近いが、立ち入りはできない。
大沼は面積が466ha程度の沼で、冬場には白鳥等の水鳥が多数飛来することで有名なようです。立派な鳥の観察小屋がありました。
周辺はヨシ群落に覆われ湖畔には近づけない。まあ、動植物にとってはありがたいか。
大沼周辺の湿原は広大なヨシ群落で、湿原のタイプとしては低層湿原と呼ばれるものです。地下水位の浅い場所に成立する湿原で、水位面の方が地表面よりも高いか、水位面が地表面と同じ程度の場所にあります。ヨシが圧倒的に優占するのに加え、大沼周辺は散策路がほぼ無く、湿原特有の植物はヨシとアブラガヤしか見ることができませんでした。湿原の中に入ればもっといろいろあるのでしょうが、確認することはできません。散策路が無いのは致命的で、正直つまらない場所でした。
メグマ沼の案内看板。すぐ近くに車10台分ぐらいの駐車場がある。
歩くのが楽しくなる木道。どっちに行こうかな~。
メグマ沼は面積が27haと小さいですが、周囲には木道が整備され、案内板もあるので、植物観察をするならこちらのほうがおススメです。
メグマ沼で最も広い面積を占めるのが、このタイプの中間湿原。
メグマ沼の周囲に広く分布する湿原はヌマガヤ、ヤマドリゼンマイ、ヤチヤナギ、イソツツジ、ホロムイイチゴ、トマリスゲ(多分)、チマキザサ(かな?)が混生する中間湿原と呼ばれるタイプです。中間湿原は低層湿原よりは水位面が低く、高層湿原よりは水位面が高いという微妙な水位の湿原です。
ヤチヤナギが優占するタイプの湿原。スゲが優占したり、ササが優占したりする部分も。
このタイプの湿原は低層湿原よりも草丈が広く、若干乾燥しているような雰囲気があります。そのため、微妙な環境の変化によって様々な植物がはえています。木道からでもモウセンゴケ、ツルコケモモといった小型の植物が観察でき、ノハナショウブ、ゼンテイカも見ることができました(いずれも花無し)。花の時期に来れば、もっといろいろ観察できると思います。
木道を歩いてメグマ沼に近づくと、ミズナラを中心として、ダケカンバ、シラカンバ、ノリウツギ等の低木が増え、中間湿原よりも植生遷移が進んだ段階にあるようです。高木性の木々が大半にも関わらず、全体的には4-5m程度の低木林で、よく見るミズナラ林やダケカンバ林と雰囲気が大きく異なります。多分、高い地下水位、強風、低温、積雪といった厳しい環境から高木林にはならないのだと思います。
背丈の高いヨシ群落だけど、木道周辺は思ったより植物が多い。
沼が見えるようになるとヨシが中心の低層湿原が出現します。このタイプの湿原はメグマ沼では広くないようですが、この環境にはサワギキョウ、ミズバショウ、エゾシロネ、ヒオウギアヤメ(かな?)等、グチャグチャした湿地を好む種類が数多く確認できました。
初秋の沼は人も鳥も少なく、とても静か。冬は水鳥が多いのかな?
沼の奥が緑色なのわかりますか?手前の浮かんでいる植物がヒシでした。
沼をよく見ると緑色の部分が遠くに見えます。何か水草がはえているようです。群生しているところまでは近づけませんでしたが、遊歩道近くの水面にヒシ(実は確認していません)が浮かんでしました。緑色の正体はヒシの可能性が高そうですが、その他の水草も生育しているかもしれません。
北海道北部はお盆を過ぎると初秋の雰囲気を醸し出します。花も少なく寂しい季節ですが、静かに散策ができ、それはそれでよかったです(でも、次は花の多い時期に訪れたい!)。縦横無尽に走る木道を全部歩きたかったのですが、時間切れ。この日見ることができた植物はこんな感じでした。
ヤチヤナギ。中間湿原を中心に生育。結構優占しているけど花は咲いても目立たない。
アブラガヤ。カヤツリグサ科の植物。晩夏~秋に茶色の花序をつけ、遠くからでも気づく。
ナガボノワレモコウ。白花と赤花がありますが、北海道で見るのは白花が多い気がします。
オオバセンキュウ。この個体は小さかったが、湿地や湿った草地に生育する大型の植物。
エゾアカバナ。小さな目立たない花をつけます。柱頭が4分裂するのが特徴。
サワギキョウ。この日一番の美しさ!色もきれいですが、花の形も面白い。