身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

覚えておきたい落葉高木-227.エノキ-

「川辺の木」と言えばヤナギの仲間をイメージする人が多いと思います。そんなイメージに是非、エノキも加えて下さい。

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岐阜県岐阜市長良川にて(10月31日)。水辺ではなく堤防に近い側に樹林をつくる。

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近づくとかなり立派な樹林。近づくと15m以上はありそう。

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どこにでもある木で、都会を流れる多摩川(神奈川県川崎市)の河川敷で撮影(7月1日)。

エノキはアサ科(旧分類体系ではニレ科)エノキ属の落葉広葉樹で、高さは20m以上に達します。少し前まではケヤキと同じ仲間でしたが、DNAの解析でケヤキよりも草本のアサ(大麻)に近いということになったようです。木と草では見た目が全然違うのに・・・、分子系統解析はなかなか慣れません。エノキは本州から九州の暖かい地域に分布し、河川敷周辺や海辺の低山にまとまった樹林をつくります。ただ、河畔や海岸沿いは昔から人が住んでいて、開発も進み、今ではまとまった樹林は珍しくなっています。河畔に大木がポツンと生育していることがありますので、そんな時は、昔はここにエノキの森があったんだな~と思い浮かべてみて下さい(図鑑によれば一里塚に昔よく植えられたと書いてありましたので、必ずしも森があったわけではないかもしれません)。

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岐阜県関市にて(4月10日)。河川敷運動場脇。これは目印?森の名残?

エノキは一里塚に植えられるぐらいなのでブナに比べるとより身近な植物かもしれません。例えば、エノキは榎本さん、榎さん等、苗字によく使用されますが、ブナ(橅)の付く苗字の方はまだ聞いたことがありません。あとはスーパーに並ぶエノキ茸。最近はブナシメジもスーパーに並んでいますが、エノキ茸の方が昔からあって先輩ですね。ちなみにエノキ茸はエノキに出るからそのような名前になったのだと思いますが、私は一度も見たことがないです。
「見たことがない」つながりで、エノキは国蝶オオムラサキの幼虫の食草となっています。エノキの森は少なくなったとはいえ、エノキの個体自体は珍しいものではなく分布地に行けばごく普通にみかけます。ところがオオムラサキを見ることは殆どないです。というか、生まれてこのかた1度しか野生のものは見たことがありません。エサはたくさんあるのに不思議だな~といつも思います。

エノキの特徴は次の3点です。
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①樹皮:灰色で浅い縦の筋や点々が表面にあります。でも近づかなければ、つるっとした樹皮に見えます。老木ほど表面の模様が顕著に出ます。
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②葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)します。形状は卵形~楕円形で、葉の中ほどより上部のみに鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があります。夏場の葉は黒っぽい緑色です。葉脈の形も特徴的で、三行脈(さんこうみゃく:葉柄の付け根付近で上向する3本の脈にわかれる形の葉脈)と呼ばれる形に近い羽状脈(うじょうみゃく:鳥の羽のように中央の軸が明瞭で側脈が互いに平行に出る形の葉脈)です。
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③実:果実は直径1cm未満で、オレンジ色から赤褐色に熟します。触ると硬いので人間は食べられませんが一応食べられる実のようですが、果肉は多くないようです。鳥は結構好きみたいです。鳥によって種子が散布される陽樹なので、林内よりも明るい場所で稚樹をよくみかけます。

似た木はいくつかありますが、比較的目にするものとしてはエゾエノキがあげられます。名前にエゾとつくことからもわかりますが、エノキよりも涼しい場所に多く、葉の鋸歯が基部近くから出て、葉の色が明るい緑色の点で異なります。