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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

桃とは全然違うけど…-347.ヤマモモ-

栽培されている果物の原種という訳では無いけど、市販の果物と同じような実をつける野生の植物を、ブドウに対してヤマブドウ、梨に対してヤマナシ、柿に対してヤマガキ(種としては同じ)なんて名付けたりしますね。それではヤマモモは桃の原種でしょうか?

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三重県紀宝町にて(6月5日)。以下、撮影日・撮影場所同じです。

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実は桃というより南国のフルーツといった感じです。直径2cmぐらいです。

ヤマモモは写真を見たらわかるように木自体もあまり桃に似ていないし、果実に至っては桃と全く似ていません。どの辺が桃なのでしょう?私の想像ですが、桃並みにおいしい実がつくからヤマモモじゃないでしょうか。実際に熟した果実は甘くてかなり美味でした。ただ、ネットで見た感じだと足が早いようなので、生の実は保存がきかないようです。たくさん収穫した際はジャムなどに加工するとよいようです。

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8m程度の個体。猿もヤマモモは大好きで、近くを通ったらだいぶ騒がれました。

分類学的に見てもヤマモモはヤマモモ科ヤマモモ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく:冬にも葉がついている、10m以上に成長する木)なので、バラ科の落葉広葉樹である桃とは全く近縁ではないようです。ヤマモモは本州(関東南部・福井県以西)・四国・九州・琉球に分布し、常緑広葉樹林に生育します。どちらかというと乾き気味の樹林に多いような印象を受けます。

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葉だけの苗木だと雄株か雌株かはわからないですね…。

自生の個体は暖地に多いですが、街路樹や庭木として使用されることも多く、植栽すれば本来の自生地より寒い地方でも生育は可能なようです(温暖化ですかね😔)。宮城県仙台市だと思うのですが、街路樹として使用されていたのには驚きました。岐阜県でも各地で植栽されていますが、自生のものは無いと考えられているようです。ヤマモモは雌雄異株なので、植栽されている個体全てに実がなるわけではありません。収穫を目的として植える場合は、雄株と雌株の両方を植えなければならないということですかね。

ヤマモモの特徴は次の3点です。

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①全体容姿と樹皮:10m以上になる高木で萌芽株となることも多い。樹皮は灰褐色(白っぽい褐色)で、皮目(ひもく:幹や枝にできる空気の出入り口の役割を持つ組織)が多いためぶつぶつが目立ちます。

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②葉の形とつき方:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)します。形状は倒披針形(とうひしんけい:葉の上方が幅広な、かなり細長い卵形を反対にしたような形)で、基部はくさび形となり1㎝前後の葉柄に続きます。高木の葉は鋸歯(きょし:葉の縁のギザギザ)が殆どないことが多いですが、目立たない鋸歯が出ることもあります。逆に幼木は粗い鋸歯が出ることが多いです。

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③葉脈と色彩等:太い側脈は葉の縁に近づくと急に上向きに曲がり、1個上の側脈と連結します(写真参照)。葉を透かすと細かい脈まではっきり見えます。葉の裏面は淡緑色で、黄色の腺点(せんてん:油の粒のような点)が多数あります。

実がつけば間違いないですが、葉だけだと常緑樹は慣れないと同定が難しいですね。一番似ている植物としてはヤマモガシがあげられると思います。ヤマモガシは本当にヤマモモとそっくりですが、葉裏に腺点が無いの大きな違いです。ヤマモモのような形状の葉で葉裏に黄色の腺点が確認できれば、まずヤマモモと思って間違いないでしょう。