梅雨時の花-198.ヒヨクソウ-
渓流沿いの砂地で少し珍しい植物に出会いました。ヒヨクソウです。
花が終わった果実期の個体。花序が複数出て、茎よりも高く伸びる。
巨大なクワガタソウみたいな雰囲気の草ですが、なんか変わった感じがします。茎の先端よりも下から伸びた花序(かじょ:花の集合)の方が背が高くなるため、アンバラスな印象を受けたのだと思います。そんなに頻繁に出会う植物ではないのですが、冷涼な地方に行くとたまに目にします。岐阜県では飛騨地方や西濃地方など、わりと山間地に多いようです。
ヒヨクソウは新しい分類ではオオバコ科(旧ゴマノハグサ科)クワガタソウ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道西南部・本州・四国に分布します。平凡社の図鑑(日本の野生植物III)では草地に生育とありましたが、渓流沿いの湿った草地に多い気がします。まあ、広い意味では草地でよいのですが、私は草地というと道端やススキ野原なんかを想像してしまうので、個人的には○○の草地みたいな表現にしてくれたほうが丁寧だったのにな~と思います。
ヒヨクソウの特徴は次の3点です。
①全体の容姿:草丈は50cm前後。茎の先に花序はつかず、上部の葉脇から多数の花序を出し、花序は茎の先端よりも背が高くなる。
②茎と葉: 茎には白色の短毛が密生します。柄のない鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)のある卵型の葉を対生(たいせい:葉が対になって着く)します。葉には両面とも短毛があります。
③花:葉腋から長く伸びた総状花序(そうじょうかじょ:短い柄のある多数の花を試験管ブラシのようにつけた花序)を出します。そこにオオイヌノフグリに似た青紫色の直径6-8mmの花を多数つけます。
ちょっと変わった容姿なのと、その大きさから在来の植物ではあまり似たものはありません。帰化植物の中には似たものがあり、私は見たことがありませんがカラフトヒヨクソウというものがあるようです。カラフトヒヨクソウは茎の毛が2列にはえ、葉の表面が無毛と図鑑(日本の帰化植物(平凡社))に記載があります。
オオカワヂシャも少し似ていますが、河川の中下流域の水辺に多く、全体無毛なので間違うことはないと思います。