どっちなんだ~?-129.ミズタネツケバナ-
今回は、殆ど写真がなかったので、標本の写真を主体で紹介します。これらが、ミズタネツケバナと思われる植物です。
ミズタネツケバナは、あまり図鑑に掲載されていませんが、分類の過程では、有名な植物学者である牧野富太郎先生がかかわっており、由緒正しい?植物です。分類学的な位置づけについては、紆余曲折がありましたが、最終的にはタネツケバナの変種という扱いになっています。ところが、比較的新しく、多くの人が利用する「日本の野生植物」(平凡社)の図鑑では、ミズタネツケバナを認めなかったため、全く記載されませんでした。そのため、私が若かった頃は、まわりの人もミズタネツケバナという存在を知りませんでした。最近になると、「神奈川県植物誌2001」(2001年)「千葉県植物誌」(2003年)といった立派な植物誌が発刊され、これらにミズタネツケバナが掲載されると、改めてその存在がクローズアップされました!(個人的な感想)
いろいろな図鑑に記載されているミズタネツケバナの特徴をまとめると、「茎は軟弱で殆ど無毛、羽状複葉の小葉は少し大きく、数は少ない」といった感じです。それでは、ミズタネツケバナ、タネツケバナ、オオバタネツケバナの3種を比較してみましょう。①②はミズタネツケバナ、③はオオバタネツケバナ、④はタネツケバナで、同じ個体の写真です。
①全体の雰囲気:ミズタネツケバナはタネツケバナに似ている場合もあれば、オオバタネツケバナに似ている時もあるようです…。タネツケバナの仲間は、時期によっても雰囲気が異なりますが、①③④なんかは、雰囲気が似ていますね。
②茎の毛:①②のミズタネツケバナは茎の下部には毛がありますが、上部では無毛です。④のタネツケバナに比べると毛の量が少なくみえますが、③のオオバタネツケバナに比べると毛の量は明らかに多いです。しかし、茎の上部だけを見れば、オオバタネツケバナと殆ど違いがありません。タネツケバナの毛の量は部位や個体によって変異があるので、この比較も迷うことが多いと思われます。
なんかモヤモヤした感じですが、ミズタネツケバナはタネツケバナとオオバタネツケバナとの中間的な植物といえそうです。タネツケバナを基準にすると、ミズタネツケバナは「茎の毛が少なく、小葉が大きめ」と説明できます(図鑑の解説に近い)。オオバタネツケバナを基準にすると、ミズタネツケバナは「茎の毛がやや目立つもの」と説明できます。そして、中間的な植物なんて存在しないと考えれば、毛の量や全体の雰囲気でどちらかに入れてしまうという形になるのだと思います。今のところ、ミズタネツケバナの分類は個人個人によって見解が違ってしまうというのが、現状のようです。