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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

初夏と言えばスゲでしょ!-51.シオクグ-

シオクグは“潮(シオ)”とつくことから想像できると思いますが、汽水域に生育するスゲです。
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シオクグは河口域や海辺に限って分布し、潮の干満で水に浸かったり、水から出てきたりするような環境に生育します。このような環境に生育する植物を塩生植物(えんせいしょくぶつ)と呼び、シオクグは分布域も広いことから塩生植物の代表的な種といえます。

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満潮時はこんな感じで水中で生育しています(愛媛県.5月)
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干潮時には地表に現れます。黄緑色がシオクグです。(愛媛県.5月)

シオクグはスゲ属シオクグ節の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州に分布します。
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シオクグの特徴は次の4点です。用語は導入編を参照して下さい。
①生え方と生育環境:地下茎で増えるため群生します。潮の干満の影響を受ける水辺に生育します。
②雌小穂の付き方:雌小穂は太く、互いの雌小穂は離れて着きます
③果胞:柱頭は3分岐。果胞は楕円形に近い卵形で、光沢がある。
④葉:葉の幅は3mm程度と細く、光沢があり造花みたいな感じです。
 
シオクグは水没するような汽水域といった特殊な環境に生育することから、生育環境だけで当たりはつけられると思います。ただ、水没しない湿地のような場所にも生育しますので、そのような環境に生育する場合は要注意です。類似種としてよくあるものにコウボウシバがあげられます。シオクグは草丈が30cm以上ですらーっとして、雌小穂は離れて着きます。コウボウシバは砂地に生育するため草丈20cm程度で、雌小穂が詰まって着き、典型的な個体では、シオクグとコウボウシバはあまり似ていません。ところが、湿ったところに生育するコウボウシバは背が高くなり、すらーっとしてきて、見た目が似てきます。
逆に、シオクグでも写真のように、たまに小型のものがあります。こんな時は、結構迷います。
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小型のシオクグ。同定するにだいぶ迷いました。(東京都.5月)

このような場合は、雌小穂の付き方や果胞の形状で識別するのがよいと思います。